みずた行政書士事務所:〒818-0056 福岡県筑紫野市二日市北2-3-3-205
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成年後見制度のメリット・デメリット
「成年後見制度」とは?
高齢の親と離れて暮らす子の心配
「高齢の母がだまされお金を使ってしまわないか」
「足の悪い親」が銀行や買い物に一人で行けるか?
「介護施設に入所した親」に親の財産管理はだれがするのか?
「将来認知症になったときの財産はどうなるのだろう」
などなど
こんなときに利用するのが成年後見制度です。
成年後見制度は、まだ親がしっかりしているときに将来の財産管理に向けた準備を始めることで、高齢の親が悪質商法などに巻き込まれることなく、財産を適切に管理できる制度です。
しかし、利用する方法を家族が押さえておかないとトラブルに巻き込まれるリスクも出てくる場合があり、利用する前に知識をお話しします。
お話しすること
1.成年後見制度とは
①成年後見制度の目的
②成年後見制度には二つあります
③後見をしてもらう人が制限されること
④後見をする人がしてよいこと、できないこと
2.利用の手続き方法と費用など
①法定後見を申立てる手続きと費用
②任意後見を申立てる手続きと費用
3.成年後見で起きるトラブルと、注意点
①親族間で起きるトラブル
②後見人による不正利用
③後見人と親族とのトラブル
さいごに
1.そもそも成年後見制度とは
①成年後見制度の目的
成年後見制度は、2000年に介護保険と同時に、判断能力が落ちてきた人の財産や生活の保護を支援する制度として始まりました。
成年後見制度ができる前は禁治産制度という制度がありましたが、「禁治産」の宣告をされると戸籍に記載されるという制度で本人の人格を否定されるような視点が指摘され、利用しづらいという欠点があり、利用も進んでいませんでした。
しかし、高齢化が進む社会を迎えるという状況の中で、本人の意思も尊重して保護や生活の支援の必要性が急速に高まり、制定されました。
②成年後見制度には二つあります
それは、「法定後見制度」と「任意後見制度」の2種類です。
法定後見制度
法定後見制度とは、家庭裁判所に申立をすることにより家裁から選任された成年後見人が、法律の範囲で本人に代わり成年後見人が財産を管理したり、本人に不利益な契約などを取り消したりすることができる制度です。
法定後見制度では、本人の状態により「後見」「保佐」「補助」の三つの種類があり、本人の判断能力の程度(医者の診断により認知症がどのくらい進んでいるか)により、法律で利用範囲が変わってきます。
➀ 軽い認知症などで判断に不安がある場合は補助
➁ 認知症が進行して判断能力の不安が大きくなったら保佐
③ 認知症が進み本人が判断することが困難になった時は後見
本人の➀から③の状態により成年後見制度の利用形態が変わります。
また、判断能力の低下は、認知症だけでなく交通事故などの原因でも起きる場合にも対応されます。
任意後見制度
任意後見制度は、家裁が後見人を選ぶのではなく、本人が後見を任せたい人を選び契約により任意後見人を選ぶ制度で任意後見契約と呼ばれています。
任意後見人の権限は本人が選んだ人と契約するので法律によって定められているわけではありません。
本人がまだ判断能力のある状態で、任意後見人候補者と相談しながら決めるもので、その後本人の判断能力が低下したときに、契約で定めた手続きにより任意後見契約を発効させるということなります。
任意後見制度には、契約の内容や同時に締結する契約方法によって進め方が下記のように三つの方法が用意されています。
将来型……本人が元気で判断能力も十分なときに任意後見契約を結んで、もしも、判断能力が低下した場合には契約内容をスタートさせるやり方です。
移行型……まだ本人の判断能力は十分あるが、高齢等などの理由で外出などが難しくなったような事情がある場合に利用されます。本人と後見人の判断で契約の内容をスタートさせる財産管理契約(委任契約)により本人の財産管理を委任させますが、委任契約と同時に任意後見契約を結んでおき、判断能力が低下した場合には任意後見契約をスタートさせるという契約です。
即効型……本人の判断能力がかなり低下している場合に、任意後見契約を結びすぐに後見の申立てをさせると契約です。
法定後見と任意後見の主な違いを整理すると次のようになります。
●法定後見(後見)
利用する場面 すでに判断能力が低下している人を保護
手続き 親族らによる家裁へ申立て
後見人の代理権 本人の財産に関する全ての行為
後見人の取り消し権 日常生活に関連する行為以外すべて取り消し可能
報酬 家裁が決める
●任意後見
利用する場面 将来の判断能力の低下への備え
手続き 本人と任意後見人候補者との契約
後見人の代理権 本人の財産に関する行為のうち契約で決められた行為
本人が単独でできる行為 日常生活に関連する行為 特に制限なし
後見人の取り消し権 全ての本人の行為について取り消し不可
報酬 契約によって決める
③後見を受ける人は何を制限される?
法定後見
成年後見人が選任されると、本人の保護のために行為が一定の制限されます。
内容は、「後見」「保佐」「補助」により異なることになります。
●「後見」:原則として本人は全ての契約ができなくなり、後見人は取り消すことができます。
たとえば、お店で買い物をしても契約ですから、契約書がなくとも、後見員が後から取り消しをすることができます。
なお、普通に生活する日用品などの買い物などは本人が一人でできます。
●「保佐」:借金や不動産の売買や法律行為など、重要な行為については保佐人の同意が必要です。
なお、保佐人の同意なくおこなった行為は、保佐人が取り消すことができます。
●「補助」:借金や不動産の売買や法律行為などは、家裁で定められた行為以外について、やはり補助人の同意が必要です。
なお、補助人の同意なしの行為を取り消すのは、保佐と同じです。
ところで、成年後見や保佐が開始すると、本人は会社の取締役になることができませんでしたが、会社法の改正で2019年から成年後見人の同意を得るなどの手続きをすれば取締役になることができます。
任意後見の場合
任意後見契約では、契約がスタート前でもスタート後も本人の行為は制限されることはありません。一人で法律行為もすることができます。
④後見人に対する法律上の制限
身上看護や財産管理が可能
成年後見人は原則として全ての法律行為を、保佐人や補助人は家裁が決めた範囲の一定の法律行為を単独ですることができます。他方、任意後見人は任意後見契約に定めた法律行為を、単独で行うことができます。
一般的な例
預貯金や不動産の管理、公共料金等の支払い、施設や介護契約手続き、
病院の入院手続き
・保証人や医療への同意はできない
・病院や施設の入院・入所は、本人の家族らが身元保証人・身元引受人になることを求められます。また、手術などを受けるときは家族らが医療行為への同意を求められことが一般的です。
しかし、成年後見人はこれらの行為をすることはできません。
なお、本人の買い物や通院の付き添いといった行為は成年後見人の職務ではありません。
2.成年後見制度の手続き及び費用
①法定後見人の手続きと費用
・必要な資料
本人について
・戸籍謄本
・住民票または戸籍の附票
・登記されていないことの証明書
・候補者の住民票または戸籍の附票
・財産資料(預金通帳の写し、不動産登記簿謄本、保険証券写しなど)
・収支資料(年金通知書の写し、施設利用料の領収書写しなど)
・診断書(書式は裁判所ウェブサイトから)
・申立書作成及び提出
申立書や申立時に必要となる書類の作成。
提出先の家裁は、本人の住所地を管轄する家裁です。
原則として、申立ての手数料800円の収入印紙、登記費用2600円の収入印紙が必要。
連絡用の切手(切手の額面や枚数は家裁に問合せ)
提出後の手続き
原則として、本人及び成年後見人候補者に家裁の担当者による聴き取り調査が行われます。
本人の判断能力の程度がわからない場合に、原則的に家裁が指定した医師による鑑定が行われることがあります。この場合には約10万円程度の予納費用が発生する場合があります。
後見人等の選任
家裁で成年後見人が必要と判断すると、成年後見人が選任されます。選任されると、成年後見人が記載された審判書が届きます。
成年後見人、保佐人、補助人は東京法務局に登記されます。登記手続きは家裁が行います。
成年後見人が選任されると家裁に報酬付与の申立て手続きを行うと、一般的に月額2万円~7万円程度(毎年)の報酬が発生し本人の財産から支払われます。特別な事務処理には報酬額が増えることになります。
なお、成年後見人を家族や親族がなる場合には、無報酬が大半です。
②任意後見人選任の手続きと費用
任意後見人を探す
任意後見人は原則として自分で選ぶことができますので信頼できる候補者を探すことが大切です。自分の子や親族でもよく行政書士などの専門家も受けてくれます。
任意後見の契約内容を決める
通常は、何を任意後見人にしてもらうのか考えることから始まります。預貯金や不動産管理から始まり、介護施設の入所手続き、公共料金などの支払い、介護申請などや、年金の手続きなどがあります。
介護や家事の手伝いなどは任意後見契約に取り決めることはできません。
専門家に任意後見人を依頼するには報酬が必要になります。報酬額も決めます。
任意後見契約書の内容を決めて公証役場を予約する
任意後見契約の内容や報酬額は契約書に盛り込むことが大切です。任意後見契約書は行政書士などの専門家に依頼して文案を作成してもらうこともできます。
契約書案を作成したら、公証役場の予約を取り任意後見契約書を作成してもらうことになります。本人が公証役場に行けるのであればどこの公証役場でも作成できますので本人の自宅に近いところで作成するのも可能です。なお、作成には次の書類をご用意ください。
・本人の戸籍謄本、住民票、印鑑証明書及び実印
・任意後見人候補者の住民票、印鑑証明書及び実印
任意後見契約書の作成
公証役場で、契約書案を公正証書として任意後見契約書として作成するために、本人と任意後見人候補者が公証役場で署名捺印をして任意後見契約書が作成できたことになります。
作成費用は原則1万1000円。
東京法務局に登記手数料する費用が1400円、印紙代2600円、郵便代、正本謄本の3部を作成する費用が約1万円程度かかり、トータルで2万円~3万円です。
任意後見契約の発効
任意後見契約では、本人の判断能力が低下したと本人及び任意後見人が判断したときには、家裁に任意後見監督人の選任申立てを行います。
手続き及び必要書類は、法定後見人の選任申立てとほぼ同じです。
3.成年後見制度のトラブルと注意点
① 親族間トラブル
成年後見人は、専門家とともに親族もなることができます。
成年後見人が選任された時は親族間の仲がスムーズでも、後見がはじまると、何かしらの理由から親族の関係が悪くなり、トラブルに発展することがあります。
任意後見の場合でも、本人と任意後見人だけで契約はできてしまいますので、他の親族が知らないうちに契約が結ばれているということがあります。
このようなケースでは、
「成年後見人が勝手に本人の財産を利用しているのではないか」
「成年後見人が自分に有利な遺言を書かせていないか」
などなど、トラブルになるケースがあります。
不安がある場合は、親族後見よりも専門家後見を検討することも検討して方がいいでしょう。
任意後見契約の事前対策
任意後見契約を利用する場合は、親族に事前説明をして了承を得ることを検討しましょう。
財産がある場合は、本人の判断能力があるうちに遺言を書いておいてもらうことをお進めします。
成年後見人による不正利用
成年後見人が本人の財産を不正に利用するリスクも考えておく必要があるかもしれません。
任意後見契約では、一般的に財産管理契約を結ぶケースが多いのですが、任意後見人予定者が本人にかわり本人の財産を監督するので任意後見契約の発効するタイミングは、任意後見契約者が家庭裁判所に申し立てることになります。
つまり、本人の認知症が進み財産管理人を本人が監督できない状態となったとき、任意後見監督人の選任の申立てを家裁に行わないケースがあるのです。すると、任意後見契約はスタートしないことになります。
後見の申立てをしない状態が続くと、本人の財産管理を監督する者が不在となることになり、財産管理人による不正のリスクは高まってしまいます。
事前の対策
トラブル防止には、親族が成年後見人や財産管理人に任せきりとしないように、定期的に本人の様子を家族が気を配り本人の財産の管理に気を配る必要があるとことが考えられます。
後見人と親族間トラブル
行政書士などの専門家が成年後見人などに選任されている場合、専門家は職業上の守秘義務がありますので、家族から本人の財産状況について質問があっても答を拒否することがあります。
しかし、成年後見人は本人の財産を管理する義務と責任がありますから、家裁に申立をする前から家族の生活費を本人の財産から支出していても、成年後見制度がスタートすると高額な生活費は成年後見人が減額するでしょう。
このようなケースでは、たとえ成年後見人が適切に職務を行なっても、ほぼ家族とトラブルになることになります。
・成年後見の事前対策の必要性
成年後見人は忠実に職務を行っている以上、家族側とのトラブルを解消する方法は残念ながらありません。家族側は、成年後見人側と連絡を取りながら、双方で不信感を無くすようにしていくことが何より大切です。
さいごに
超高齢社会の到来とともに、高齢者の財産管理や身上監護の必要性や重要性はこれから増えるはかりです。さらに、ご自分が高齢になったときには、自分の財産管理をだれかに頼むことに備えなければならない時代になっているかもしれません。
そのためにも、この成年後見制度の利用方法をきちんと押さえておくことが大切です。また、遺言書の作成など他の制度とうまく組み合わせていきながら有効活用を考えることが大切です。
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入力がうまくいかない場合は、上記内容をご確認のうえ、メールにてご連絡ください。
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