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認知症の親の「遺言書」トラブル
親の一方が認知症を患うと、「相続」にも大きな影響を及ぼします。さらに、2025年は700万人の高齢者が「認知症」になると予想されています。親が「認知症」と診断された場合の遺言書トラブルはどうなるか、どうすれば避けられるか、みなさまの一助になればと考え、認知症に備えての相続対策をご紹介させて頂きます。
相続対策を進めるうえでは「遺言書」が重要です。ほとんどの遺言書は、本人が自筆で記入して自宅もしくは法務局に保管してもらう「自筆証書遺言」と、公証役場で公証人と2人の証人が立ち会い作成する「公正証書遺言」になります。
「自筆証書遺言は、1.全文(簡単な内容)、2.日付、3.署名、4.署名(5.財産目録)の記載があればいいので、認知能力が衰えていても書ける人は少なくありません。
そこで、➀相続人が指示して自分に有利な文面
②認知症と診断される前の日付を書かせる
といった自筆証書を作成させるケースも考えられなくもありません。
実際に実務に携わる専門家には『認知症と診断される前の日付で遺言書いても、大丈夫でしょうか?』といった怪しい相談がくるといいます。もちろん違法行為でありダメです。
では、費用や手間がかかる「公正証書遺言」のほうが安心なのかと考えたいところですが、この公正証書遺言の信頼性を相続人で悪用するケースも実際にあるとの話です。
認知症だった親の遺言書が複数でてきたケース
一番日付の古い遺言書は『遺産全部を長男へ』という公正証書遺言。後の日付の2つの遺言は『すべての遺産を次男へ』という自筆証書遺言と公正証書遺言です。遺言書は、原則として日付の新しい遺言書の方が有効ですが、長男から『次男の公正証書遺言は、偽造では?』という相談がありました。
次男は公正証書遺言も用意していたのですが、認知症と診断した医者のカルテを調べると、親が認知症とわかっていながら遺言書を書かせたうえ、医者に偽造を持ちかけた証拠が出てきました。その結果、次男は相続欠格(相続人の資格剥奪)となりました。
このケースは次男が親の遺言を偽造した証拠があったことで解決しましたが、公正証書遺言の作成でも相続人が自分たちに都合のいい遺言を親や被相続人に書かせることは不可能ではないそうです。
公正証書遺言の作成は、法務大臣から任命された元裁判官などが公証人になって、作成しますので作成過程は厳密です。しかし、故意とは断定できませんが見逃してしまうこともあります。調べてみると遺言作成の前日に受けた認知症のカルテが出てきて、作成した公正証書遺言は無効になった例もあります。
認知症といっても症状の出方は人により様々なため、長谷川式などの認知症診断スケールでその場で測定しない限り、判断は難しいといわれています。
そうはいっても、相続人が遺言書を偽造させた場合は「相続欠格者」となって相続の資格を失います。
遺言書の正当性を証明するには、遺言書を作成した時点で同時に「認知症ではない」と証明する医者の診断書ももらっておくのが望ましい。また、正常な判断能力があったと一目でわかるように、遺言書作成時にビデオを撮影しておくことなどが効果だという。
認知症になる前に親子でやっておくべきこと
➀認知症の予兆をチェックする
本人と家族が自治体や医療機関のセルフチェックリストをもとに予兆がないか定期的に確認する
②固定電話は解約する
オレオレ詐欺などや、通販にのめりこむなど、財産が減る可能性があるので携帯電話に一本化する
③金融機関の口座をまとめる
金融機関の口座を預金保険で保護される1000万単位でまとめて、相続人が把握しやすいようにしておく
④定期預金は解約する
本人以外は定期預金の解約など契約内容の変更はできないので家族が引き出しやすい普通預金などの口座に移しておく
⑤代理人カードを作っておく
親と口座名義人と生計を同じくする家族が預貯金を引き出せる。しかし、認知症で家族カードは使えなくなることもあるので注意
⑥印鑑や通帳の保管場所を共有しておく
金融機関や支店名、口座番号だけでなく印鑑や通帳などの保管場所も共有して相続人が分かりやすくしておく
⑦株などの書類の保管場所を共有しておく
証券会社の支店ごとに分断されている株券や、証券会社からの通知の保管場所を共有しておく
⑧不動産の登記情報を共有しておく
先祖代々の土地など所有する不動産の所在地だけでなく、登記上の地番や名義人などの情報を共有しておく
⑨債務の情報を共有しておく
消費者ローンや金融機関のオーバーローンの情報はだけでなく住宅ローンや自動車ローンなどの債務情報を共有しておく
⑩パソコンやスマホのパスワードを共有しておく
ネット銀行やネット証券などのデジタル情報を把握できるようにしておく
⑪貸金庫に重要書類やメモなどを預けておく
金融資産などの書類や情報を家族と共有したくない人は、元気なうちに貸金庫を契約して保管しておく
⑫貸金庫の代理人登録を忘れずに
本人の死後は相続人全員の立ち合いがないと開られないが、認知症であれば代理人が開けられるので相続の手続きがしやすくなる
⑬株や投資信託は売却する
含み益があるうちに株や投資信託を売却しておくこと。認知症になって含み損を抱え、資産が減る可能性がある
⑭ゴルフ場などの会員権は売却すること
死後に売る場合、一旦相続人へ名義変更をしてから売ることになり、利用状況を見て先に売っておくこと
⑮自動車の名義変更をする
自働車の売却や廃車をする場合、相続人へ名後変更が必要になるため高齢で免許返納を考えているなら早めの名義変更を検討すること
⑯死亡保険の受取人を変えておく
夫が契約者の場合、妻が受取人になることが多い。高齢の妻や親が受取人の場合は他の家族に変えておくこと
⑰ペットの引取り先を決めておく
世話をする人が無い場合、ペットの孤独死にならないようにペッホームを含めて検討しておくこと
⑱エンディングノートを書いておく
延命治療や死後の葬儀の依頼先などや、資産関係の書類の保管場所などの情報をすべて書いておく
⑲財産目録の作成
預貯金、不動産、証券、生命保険から住宅ローンの負債や多岐にわたる財産の目録をまとめておく
⑳年間110万円の暦年贈与をすること
暦年贈与で110万円までは課税されない。しかし、贈与時に認知症で意思能力がないと、後で贈与が無効になる。
㉑教育資金の一括贈与をしておく
孫など1人当たり1500万円までは贈与税が非課税になる。一括贈与にすることで、認知症リスクに備えられる。
㉒子や孫に住宅資金の贈与をしておく
省エネ住宅は一人当たり1000万円まで、それ以外の住宅は一人当たり500万円まで贈与税は非課税。
㉓任意後見人と契約する
認知症になる前に、任意後見契約で家族や第三者などを財産管理を任せる後見人に選んでおく。親族が後見人選択で悩まなくてよい
㉔家族信託契約を検討する
家族と信託契約を結び、預貯金の残額を移して財産管理をしてもらったり、不動産の管理・売却などの代行を生涯してもらうことができる
㉕自筆証書遺言を作成
本人の手書きで行う。費用は安く済むが家庭裁判所で形式を確認する検認の手続きが必要になる
㉖公正証書遺言を作成
公証役場で公証人の関与で正確な遺言を作成してもらえる。原本は公証役場が保管してくれるが、証人2名が必要。
㉗遺言執行者を決めること
遺言執行者を指定して遺言書に書いておくと相続手続は執行者がするので相続人は楽になる
㉘遺言書の保管場所を共有しておく
自筆証書遺言の場合、自宅だけでなく、貸金庫や信託銀行など保管場所は様々なため家族で保管場所を共有しておく
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