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「シニア婚」の相続
2021年の『人口動態調査』(厚労省)によると、60歳以上の婚姻件数は男性992件、女性402件と上昇しているそうです。
シニア婚の活況で、高齢者会員の結婚したい理由で男性の1位は「身の回りの世話をしてほしい」、女性は「将来の生活費が心配」だとなっています。
「身の回りの世話」をしてくれた妻に、夫として「将来の生活費の心配」はさせたくない。
そういう思いから、お互いを支え合ってきたシニア夫婦として、自分の遺産をすべて配偶者に渡したいと考えるのは、自然な心情と言えるかもしれません。
ところで、配偶者は常に相続人となることが民法で定められています。そのほかの相続順位としては、第1順位が子およびその代襲相続人(孫など)、第2順位が直系尊属(父母や祖父母など)です。
シニア婚では、子がなく親がすでに他界している場合、第3順位の兄弟姉妹およびその代襲相続人(甥や姪など)が相続人となります。
では、こうした「シニア婚の相続」の場合、夫(遺産を遺して亡くなった被相続人)が遺言書で「配偶者に一切の財産を相続させる」という遺言していた場合には、その遺言は法律的に問題はないのでしょうか?
実は、兄弟姉妹には法定相続人になれるが遺留分はないのです。
例題で説明しましょう。相続人が妻(配偶者)と夫の姉1名、妹1名の場合に、民法で示されている「法定相続分」に通りに、相続財産を配分すると相続割合は以下のようになります。
妻(配偶者):3/4
夫の姉と妹:各1/8(残り1/4を1/2ずつ)
子の場合に、妻(配偶者)以外の相続人が、「一切の財産を配偶者へ」という遺言を認めない場合はどうなるのでしょうか?
民法では、第1順位の子や孫、第2順位の父母や祖父母なら、法定相続人は遺留分(最低限保障されている遺産取得分)を主張するために家庭裁判所に遺産分割の調停で「遺留分侵害額請求」申立てをすることができます。
しかし、第3順位の兄弟姉妹には遺留分を請求できる権利がありません。
民法では「遺留分」に関する第1042条(遺留分の帰属及びその割合)に以下通りに定められています。
兄弟姉妹以外の相続人は、遺留分として、次条第1項に規定する遺留分を算定するための財産の価額に、次の各号に掲げる区分に応じてそれぞれ当該各号に定める割合を乗じた額を受ける。
1 直系尊属のみが相続人である場合 3分の1
2 前号に掲げる場合以外の場合 2分の1
では、なぜ兄弟姉妹には「遺留分」が認められないのでしょうか?民法第889条(直系尊属及び兄弟姉妹の相続権)の、889条1を読むと次のように定められています。
次に掲げる者は、第887条の規定により相続人となるべき者がない場合には、次に掲げる順序の順位に従って相続人となる。
1 被相続人の直系尊属。ただし、親等の異なる者の間では、その近い者を先にする。
2 被相続人の兄弟姉妹
ようするに、相続権は被相続人と「近い者」親族が優先され、兄弟姉妹は両親や祖父母、子や孫といった直系の親族よりも遠い関係だからということです。
また、民法第752条では「夫婦は同居し、互いに協力し扶助しなければならない」と定められています。
夫婦は経済的に双方が暮らしを支え合う最も近い関係であることから、この場合は常に妻(配偶者)が相続人として優先権が与えられているのです。
そういう意味では、相続財産の一切を配偶者に相続させたい「シニア婚の夫」は、「配偶者に一切の財産を相続させる」と遺言書に残すことは非常に強い効力があると言えます。
また、民法第908条1でも以下のように(遺産の分割の方法の指定及び遺産の分割の禁止)が定められています。
被相続人は、遺言で、遺産の分割の方法を定め、若しくはこれを定めることを第三者に委託し、又は相続開始の時から5年を超えない期間を定めて、遺産の分割を禁ずることができる。
なぜ兄弟姉妹が兄弟である夫のかいた遺言書の内容に不満をもっている場合に、異論をとなえることができないのか。
遺言書は法定相続を優先しますが覆されるケースもあります
相続人が遺産の配分割合を決めるには、相続人全員が「遺産分割協議」を行なう必要があります。
遺言書の内容に異議がある場合に相続人全員が「遺産分割協議」で遺産分割を行うと以下のケースの場合には、認められる可能性があります。
相続人全員が「遺産分割協議」に賛成したケース
相続人が全員で遺言の内容に対して反対をして、「遺産分割協議」を行うことに賛成すれば、相続人全員の話し合いで遺産の配分を決められるのです。
ただし、相続人が配偶者と兄弟姉妹の場合には、配偶者と他の相続人全員が「遺産分割協議」に賛成しなければいけません。
遺言書が無効のケース
遺言書の形式が法定通りに書かれていない場合には、その遺言は無効となります。
法律で認められた遺言書で一般的に利用される形式は、「自筆証書遺言」「公正証書遺言」「秘密証書遺言」の3種類です。
「秘密証書遺言」と法務局に預けていない「自筆証書遺言」は、開封前に家庭裁判所の検認を受なければなりません。
検認とは、遺言内容の有効・無効を判断するのではなく、遺言書の形式、日付、署名等を確認し、遺言書の偽造・変造を防止するための手続きです。
「公正証書遺言」は、公正役場で証人2名の立ち会いの上、遺言書作成の専門家である公証人によって作成されます。
そのため、最も無効になりにくい遺言書と言えるでしょう。
ただし、その遺言書が被相続人の意思によるものかどうかも、有効・無効の判断ポイントとなります。
たとえば、その遺言書が誰かに強制されたり、被相続人が認知症や寝たきり状態で作成されたりしたなら、相続人は無効を主張できます。
家庭裁判所に遺言無効確認の調停を申し立て、相続人同士で話し合いますが、調停で決着しない場合は訴訟となります。
被相続人自身が遺言を撤回した場合
「先に作成した遺言を撤回する」という内容の遺言書が見つかった場合、先の遺言書は無効となります。
遺言書の有効性は、遺言書に記された日付の新しいものが優先されます。
遺言書で指定された相続人が相続欠格・相続放棄の場合
「相続欠格」とは、犯罪をおかした相続人が相続権を失うことです。
一度でも「相続欠格」になってしまうと、その人は相続人としての資格を永遠に剥奪されることになります。
「相続欠格」と混同されやすいものに、「相続排除」があります。
被相続人を虐待や侮辱したことのある者を相続人から排除するため、被相続人自身が家庭裁判所に請求します。
また、遺言書で指定された相続人が自らの意思で「相続放棄」すれば、遺言書の内容は実行されず、ほかの相続人が話し合いで遺産分割することになります。
「相続放棄」は、相続開始から3ヵ月以内に放棄したい相続人本人が家庭裁判所に申し出る必要があります。
なお、配偶者とは、入籍している法律婚の夫や妻を指します。しかし、結婚観も次第に多様化しています。
民法は国民生活に関わる法律ですから、今後も改正があるかもしれません。また、相続税法などの税制改正は毎年行われています。
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