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「おひとりさまの相続」
おひとりさまの作成すべき遺言書の内容
おひとりさまは、自分が亡くなった場合に、相続人(法定相続人)がいるか把握しておくことが重要です。
相続人が無く、自分が相続させたい人も無い場合、遺産はすべて国庫に納付されます。
しかし、パートナーに自分の財産を遺したい、世話をしてくれた人に自分の財産を相続させたい、兄弟姉妹の中で仲が良いひとにたくさん財産を相続させたいと考えている場合には、その自分の意思を遺言として遺言書を作成することが必要です。
中でもパートナーに遺したい場合、遺言書を作成しないと、相続になってもパートナーは法定相続人ではないため、特別縁故者の申請をしなければなりません。でも、遺言書をルール通りの作成しておけば、パートナーは相続が可能になります。*注1 なお、また遺言書には財産目録を添付することができるので、財産の所在について相続人らで揉めることは無くなります。*注2
注1 パートナーなどの法定相続人以外に相続させたい場合には、遺言執行者を指定すると相続手続きで混乱が起きることを防ぐように注意が必要です。
注2 平成30年に民法及び家事事件手続法の一部が改正され自筆証書遺言の民法第968条第2項が新設され財産目録を添付できることになりました。
なお、兄弟姉妹は法定相続人ですが、遺留分権はないため、遺言書ですべての財産をパートナーなどに相続させることができます。
おひとりさまは
財産を譲りたい人を決めて下さい
遺言書を作成する場合は、おひとりさまが元気なうちに取り掛かるべきです。だんだんと年齢を重ねるうちに億劫になってくるからです。また、認知症や要介護状態になると遺言書の作成自体に問題が発生したりする可能性も出てきます。なお、遺言書は民法で定められた様式のとおりに、本人が自分で作成をしなければなりません。
認知症や介護状態になると遺言書の作成ではなく、ご本人の財産管理や介護をしてくれる人を決めておく任意後見制度の利用も検討しなければなりません。この任意後見人は自分が信頼している人に依頼しておくことが原則ですが、行政書士や弁護士などの専門家に依頼しておくと、相続の際にも財産処分や相続手続きなどもしてくれるので大いに役立つと思います。
おひとりさまの相続問題は、超高齢化の進展の中で日本全体に確実に起こる問題です。しかし、遺言書さえキチンと作成さえしておけば、自分の財産を自分の意志で相続させたい人に使ってもらうことができるので、無駄な親族間紛争にならないので安心できる時代ともいえます。
だから、おひとりさまは元気なうちに準備をさえしておけば、自分の築いてきた財産を有効に社会に生かすことができるのです。自分の財産を利用してくれる人を早めに決めるようにしましょう。
パートナーについて一言触れておきましょう。
パートナーは法律上、どんなに長期間にわたって関係が続きていても、相続権はありません。もしも長年連れ添ったパートナーいらっしゃる場合でも、パートナーは自分自身で相続発生後に家庭裁判所で特別縁故者として相続財産の申立てを行うことが必要です。
なお、特別縁故者として家庭裁判所に認められるには、生計を同じくしていた人、療養看護に努めた人、特別の縁故があった人などで、さらに申立てを行えるようになるまでに、相続財産管理人が選任されてから10ヶ月以上かかります。
おひとりさまご自身がご自分の亡きあとのことを考えておかなければ、パートナーやお世話をしてきた人は混乱することになりなす。ご注意ください。
準備せず亡くなるとトラブルを招く
1. おひとりさまの部屋の片づけ問題
不動産業者との解約手続きは大変手間が掛かります。自家用車がある場合には、処分も大変です。
2. 法定相続人の兄弟姉妹が登場する
疎遠で仲がよくなかったりするケースは多くあります。もしも、ご高齢な兄弟姉妹だったりすると、認知症ということも起こりえます。こうした場合は、成年後見人などを選び、財産管理の問題が起こることになります。場合によっては、戸籍を辿り、見ず知らずの甥や姪まで登場すると収拾がつかなくなってきます。
3. もしも兄弟姉妹の中に海外在住の人などがいたときは?
遺産分割協議書に署名捺印をもらうことなどを考えると途方もない時間と費用が掛かることも予想されます。
4. 遺産額が多い場合は?
など考えるさらに遺産額が多い場合など考えると、遺産分割協議において親戚一同が出てくることも考えると混乱は深まるばかりです。
5. 長年同居していたパートナーが、この遺産分割に巻き込まれると?
もしも、長年同居していたパートナーが、この遺産分割に巻き込まれると兄弟姉妹から白い目で見られるといったことにもなりかねません。
再度、おひとりさまに申し上げますが、ご自分の死後にこのような混乱やトラブルを招かないようにするためには元気な今から対策をたてておくことが必要です。
激増するであろう「おひとりさま相続」
この私たちの時代には、子供がいらっしゃらないご夫婦、あるいは子供を作らないご夫婦も多くなっています。このようなご夫婦で片方が亡くなると、二次相続では必ずおひとりさま相続が発生することになります。
今、書店で販売されている相続関係の書籍は、ほとんど子供や孫が相続することを前提にした内容になっています。しかし、直近の相続問題は、法定相続人のいない「おひとりさま相続問題」になる可能性が高いのです。
最近の当センターのご相談の中に「私は独身です。相続人は兄弟姉妹の子ども達です。この甥姪たちには会ったこともありません。しかし、私が介護施設に入り、世話をしてくれる人もいません。多分、お金は残ると思いますし、自分のマンションもありますが、死んだら国のものになるのは寂しいです。何か方法はありませんか」という相談がぽつぽつあります。ご自分の財産を相続する人がいないという現実が、すぐそこに迫っていることを考えて相続問題に向かって頂きたいと思います。
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