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相続人が居ない遺産の辿りつく先
特別縁故者に対する財産分与
核家族化の進展が言われて久しいのですが、その後の家族は晩婚化、少子化、非婚化など多様性が進む中で、亡くなった方の財産処分に大きな問題の出てくることが多くなったように思われます。
もともと家庭裁判所の調停では、亡くなった方の相続人が遺産の奪い合いになる紛争が多く、遺産分割協議や遺産分割調停や、遺言書を原因とする遺留分侵害の事件も多くありました。
もちろん、現在でも遺産分割や遺留分に関する争いのご相談が多いのですが、最近では、相続人が居ないケースのトラブル相談が増えてきているように感じます。
こんなお問い合わせがありました
関東のある県で産まれた相談者Aさん。
2人兄弟の両親の子として、長男B家の従兄たちと仲良く暮らしていました。成長とともにAさん一家は、神奈川に移り住みました。従兄たちとは、離れてはいましたが、必ずお盆と正月は実家で同じ布団で寝るような仲でした。なかでも男の子のいないAさんは従兄の甲さんと兄弟のように仲が良かったのです。終身独身で過ごしていた甲さんのことは、年老いてからも変わらず交流を続けていました。その甲さんが亡くなったのです。
老後は、甲さんの実家で一人暮らしでしたが、いつのまにか介護施設に入れられていてAさんに実家に帰りたいと頻繁に電話をしてきていました。しかし、同じ町内に住む乙親子が、身寄りがない甲さんの世話をするという理由で甲さんの家に入り込み、病院や施設入所をさせていたのです。
再三、Aさんは、乙親子に会いに行き、電話で勝手に甲を施設に入れないように話合いをして交流を止めていたのですが、遠距離であったために乙親子の行動を止めることはできませんでした。
ところが、甲さんが亡くなって4か月後には乙親子が特別縁故者の申立てをしたということが分かりました。
そこで、Aさん側も特別縁故者の申立てをして争うことになりました。
特別縁故者として相続財産分与の申立て
相続人不存在の場合、最終的には国庫に遺産が帰属するのですが、そこに至るまでに、「相続人の捜索手続」・「相続財産の管理や清算手続」(債権者への弁済等)が必要となります。
そこで、特別縁故者として相続財産分与の申立てをするのですが、この特別縁故者になれる人は民法で以下の者が当たるとされています。
① 「被相続人と生計を同じくしていた者」
② 「被相続人の療養看護に努めた者」
③ 「その他被相続人と特別の縁故があった者」という類型があります。
➀に当たる人には、内縁の妻、養子などが当たります。必ず同居していた方が選ばれるわけではなく、仕事などの都合で同居していなかった方でも認められるケースはあります。
②は、食事や身の回りの世話をしていた方や、老人ホームや介護施設を訪れて親身になってお世話していた方に認められます。看護師などの関係者は特別縁故者には当たりません。
③の例は、個別具体的な事情で縁故の濃淡を判断し、「特別の縁故があったと
見做された場合には、特別縁故者と判断されることになります。
(民法第958条の3)
そして、利害関係人や検察官が家庭裁判所に申し立てをして、「相続財産管理人」を選任してもらいます。
そして、生前の様々な事情から、「これらの者に財産を分与するのが相当」と判断された場合に、債務等を清算して残った財産の全部または一部の分与が認められます。
特別縁故者への財産分与は、「特別縁故者に該当するか否か」の段階で家庭裁判所に大きな裁量が委ねられ、更に、「分与が相当か否か」の段階でも、生前の様々な事情を考慮した裁量的な判断に委ねられています。
そこで、仮に「生計同一」や「療養看護」といった分かりやすい条件を満たさない場合でも、被相続人と生前に濃い関わりがあった場合には、様々な事情を十分に裁判所に訴え掛けて、縁故のあった方に被相続人の遺産が引き継がれていくことが、被相続人の意思にも合致することにも繫がると思います。
特別縁故者の相続財産分与申立の流れ
特別縁故者が相続財産の分与を受けるためには、相続人の不存在が前提です。
被相続人の財産の確定及び相続人の不存在を確定するためには、被相続人の最後の住所地の家庭裁判所に相続財産管理人選任の申立てを行います。
1. 相続財産管理人の選任申立
2. 相続財産管理人の選任
3. 債権者・受遺者に対する申出の官報公告
4. 相続財産の精算・債務の弁済
5. 家庭裁判所が相続人の捜索(6ヶ月)
6. 相続人不存在が確定
7. 特別縁故者への財産分与審判の申立て
8. 相続財産の全部又は一部を取得し、残りは国庫に帰属する
相続財産管理人の選任がされると、家庭裁判所は相続財産管理人選任の公告、被相続人の債権者や受遺者に対する請求の申し出の公告及び催告と6ヶ月以上の期間で相続人捜索の公告を行います。公告期間満了後(3ヶ月以内)に特別縁故者の財産分与請求を行うことができます。
相続財産管理人が選任後から、財産分与請求をすることができるまで10ヶ月以上の期間かかります。ですから、1年以上の期間がかかります。その後に、家庭裁判所が相当と認められると、債権者や受遺者に対する精算が終わった後の相続財産の全部又は一部を分与することになります。
一方、特別縁故者の財産分与が相当ではないと家庭裁判所が判断した場合には、国庫に帰属することになります。(この判断に対しては即時抗告ができる)
なお、相続人捜索の公告を行った結果、法定相続人が見つかった場合には、法定相続人が相続するため特別縁故者として相続財産の分与を受けることはできません。
原則として、相続人がいない場合は最終的に相続財産は国庫に帰属します。
この相続人がいない場合において相続人の不存在が確定し、家庭裁判所から特別縁故者だと認められると相続財産の全部又は一部について分与を受けることができることになります。
まとめ
特別縁故者による相続財産分与の申立ては、時間がかかり、その上に手続きも複雑です。さらに、相続財産分与の申立てをしたからといって、必ず認められるものでもありません。
本来であれば、相続人以外の方に財産を渡したい場合や財産を受ける方は、遺言書を書いて財産を相続なり遺贈を受ける方をお考えになるべきです。その方が確実ですし、大変な特別縁故者の分与請求は避けられた方がいいと考えます。
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