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相続人の中に成年被後見人と成年後見人がいる場合の遺産分割方法
成年後見人には、家族の方が後見人になる親族後見人も多くあります。
その家族の父が亡くなった場合に、その妻が認知症で、長男が母様の成年後見人だった場合には、父の遺産分割をしたらよいでしょうか。
じつは、相続人が成年後見人として遺産分割協議に参加する行為は利益相反行為になるのです。
父が被相続人、被相続人の妻である母親と長男、長女の3人のケースで考えます。
母親は認知症で長男が母親の成年被後見人になっているケースです。
このケースでは、長男は母親の成年後見人としての立場で遺産分割に参加し、また長男自身の立場として相続手続きに参加することになります。母親の利益と自己の利益が対立する状況が生じてしまうことになります。
こうした状態のことを利益相反と言います。
相続人同士がお互いに利益相反関係にある状態の中で遺産分割協議はできません。
この状態では、どのように相続手続きを進めることができるのでしょうか。2つの方法があります。
1.特別代理人を選任して遺産分割をする
父親の遺産を法定相続分どおりに相続手続をしない場合は、相続人の間で遺産分割協議が必要になります。
前述した通り、長男についてはお母親の成年後見人という立場と、自身の相続人という立場の2つの立場が、利益相反状態となります。
この利益相反状態の解消のために、母親の代理人として成年後見人とは別の代理人を決めます。
その方法が、家庭裁判所に母親のために特別代理人選任の申立を行います。
成年後見人(長男)の代わりに別の人に母親の代理人になってもらうことで、遺産分割協議ができるようになります。
2.特別代理人選任の申立て方法
特別代理人選任の申立ては、母親(成年被後見人)の住んでいる住所地を管轄する家庭裁判所に対して行います。
特別代理人はどうやって決めるのかという問題がありますが、母親(成年被後見人)と利益相反の関係になければ基本的に制限はないとされています。具体的には、成年後見人の配偶者側の親族や、甥姪、叔父叔母でも大丈夫ということになります。
家庭裁判所へ申立書の添付書類として、特別代理人候補者の住民票と、遺産分割協議書の案を提出することになります。
申立をする家庭裁判所によっては更に追加で書類が必要となる可能性がありますので、事前に申立てをする家庭裁判所に問合せをして確認した方がよいでしょう。
3.成年被後見人が相続人となる遺産分割協議で気をつけること
なお、相続人の中に成年被後見人(母親)がいる場合に、遺産分割書の内容で気を付けることがあります。
それは、母親(成年被後見人)が最低でも法定相続分を取得するように協議書をまとめなければいけないということです。
特別代理人を立てることで他の相続人に都合の良いように遺産分割協議書ができるということではありませんから注意してください。
4.遺産分割をせず法定相続をする方法
遺産分割協議書を作成せずに法定相続分で相続人全員が相続分を取得する方法もあります。
法定相続分の通りの相続するのであれば遺産分割協議は不要です。
前述の例でいうと、母親の法定相続分が2分の1、長男、長女はそれぞれ4分の1を取得します。
もちろん不動産の名義は、法定相続分の通りに共有となり、預貯金の解約金も法定相続分通りに取得することになります。
まとめ:家庭の事情に合わせた相続手続きを!
相続人(長男)が自分以外の相続人(母親)の成年後見人になっている場合、特別代理人を立てて遺産分割協議を行うか、もしくは遺産分割協議をせずに法定相続分通りの相続を行うかという選択肢があります。
いずれの場合でも、被成年後見人には最低でも法定相続分を取得させるようにしなければなりません。
相続人の中に成年後見人(長男)がいると制限が生じてしまうことになりますが、それぞれの家庭の事情に合わせた相続手続きを心がけましょう。
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