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おひとりさまの相続とは?

おひとりさまの相続とは?

 

超高齢社会の進展により老々介護の後に、家族のいない「おひとりさま」が増えています。このおひとりさまご自身の相続になると、相続人がいない状況になることになります(法律上「相続人不存在」といいます)。このようなケースでは、おひとりさまの遺産はどう扱われるのでしょうか? なお、遺産を渡したい相手がいるケースでは、実行できる方法を解説します。

 

「相続人不存在」とは?

相続人不存在とは、次のようなケースで発生します。

 

1. おひとりさまに親族がいない

民法では、法律上で定められた法定相続人が相続する権利をもっています。

 

➀配偶者は常に相続人となります

➁次は、  第1順位として子ども(孫も含む)直系卑属

③その次は、第2順位には親もしくは祖父母などの直系尊属

④その次に、第3順位として兄弟姉妹又は甥姪

 

相続の権利は、➀の配偶者と②から④に移っていきます。しかし、最近の社会状況で未婚の方が増えて子も兄弟姉妹もいない方や、そもそも一人で、又は先に亡くっていない状態を「相続人不存在」といいます。

 

なお、子どもが先に亡くなっている場合でも、孫は相続人となります。同様に、兄弟姉妹が亡くなり、甥や姪がいれば相続人となります。この状態は、「代襲相続」といいますが相続人不存在とはならないのです。

 

2. 相続人全員が「相続放棄」をしている場合

被相続人(亡くなった人)が借金などのマイナスの財産がある場合に、相続人はその債務も相続します。大きなマイナスの財産を抱えていたときは、相続人は「相続放棄」をすれば、マイナスの財産を回避できます。こうして相続人全員が相続放棄をしたときには、相続人不存在となるのです。

 

3. 相続人の全てが権利を失った

相続したくても、次のケースでは相続人の資格や権利を失うことがあります。

 

●相続欠格になると強制的に相続権が剥奪されてしまいます。

 

ケース1 被相続人や他の相続人を死亡させた、または死亡させようとした

ケース2 被相続人にたいして詐欺や脅迫で遺言作成の変更、取消をさせたなど

 

●相続人の廃除 

被相続人が家庭裁判所へ申し立てをするか遺言書に記載する。

 

ケース1 被相続人を虐待した

ケース2 被相続人の財産を不当に処分した

ケース3 ギャンブルなどで多額の借金を被相続人におわせるなど

ケース4 非行や反社会勢力などに加入した

ケース5 財産目的の婚姻など

 

相続人の全員がこれらにあてはまる場合は、相続人不存在になります。相続人の配偶者が財産目当などの場合はあてはまり、よくある話です。

 

4. 相続人が行方不明

 

相続人が行方不明の場合には、「不在者財産管理人」を選任して相続手続きを進めるか、「失踪宣告」の申し立をする要があります。失踪宣告を申し立てをして受理された場合には、「死亡した」とみなされ、法律上の相続人不存在となります。

 

なお、相続人不存在の場合の遺産の行先は?

 

① 遺言書で指定した受遺者(団体など)

② 特別縁故者

③ 国庫

以上の順番で相続されます。ただし、借金など負債があれば、債権者に対する支払いが優先します。

 

遺言書が優先です

 

⑴遺言書で指定した受遺者

相続では、被相続人の遺言書があれば優先します。ですから相続人以外に全財産を渡すことも可能です。しかし、相続人は生活のために最低限の「遺留分」が認められています。

 

被相続人は、相続人不存在の場合にお世話になった人や指定する団体に相続してもらうよう遺言書を書いておけば、実現できます。なお、借金がある場合は、その借金も受遺者に引き継がれますので注意してください(包括遺贈のケース)。

 

⑵特別縁故者

相続人が不存在で、しかも遺言書もないときは、内縁の配偶者や、介護をしてくれた人などは、遺産受け取れる可能性があります。この人達を「特別縁故者」といっています。

 

特別縁故者に認められるかどうかは家庭裁判所が行いますが、要件が決められています。

 ●被相続人と生計を同じくしていた人(内縁の配偶者、事実上の養子など)

 ●被相続人の療養看護につとめた人(介護士や看護師などが仕事として介護していた人は認められない)

●被相続人と特別密接な関係にあった人

 

⑶最後は国庫

遺言書もなく特別縁故者もない場合又は特別縁故者が財産の一部を取得して余ったものは、最終的に国のものになります。

 

特別縁故者が遺産を受け取るまでの流れ

最初に家庭裁判所で「相続財産管理人」の選任を申し立てを行います。

相続財産管理人は、遺産を管理して債権者への配当や特別縁故者への分与などの処分を行う人です。

 

申し立てる家庭裁判所

「被相続人の最終住所地」を管轄する家庭裁判所

 

必要書類

 

被相続人の出生時から死亡時までの戸籍謄本類

被相続人の住民票除票又は戸籍附票

財産関係資料(預貯金通帳、不動産の全部事項証明書、証券会社に預けた有価証券などの資料)

・被相続人との利害関係を示す資料(同居していた住民票、健康保険証、看護記録や親族関係を示す戸籍謄本類、被相続人の書き残したメモなど)

 

手続きは時間とお金がかかる

完了するには、1年くらい時間がかかります。家庭裁判所を通した厳格な処理が行われるため、特別縁故者でも期待した財産分与が受けられないといったことも起こります。

 

相続財産管理人には、弁護士や司法書士などが選ばれるますので報酬が発生します。財産管理の手間などに応じ家庭裁判所が決定しますが、月額数万円かかることもあります。

 

遺言書を書こう!

相続財産管理人の選任手続きは、「専門家への報酬などで遺産が目減りします」また「国庫に収納されるリスク」などデメリットがあります。財産を譲りたい人や、特別縁故者などいる場合は、遺言書を作成しましょう。財団や団体など、または地元に譲ることなどもできます。有効な遺言書で相続財産管理人を選任する必要もなくなります。

遺言書の作り方

遺言書は、作成されている順番から申し上げると、自分で書く「自筆証書遺言」や公証役場で作成する「公正証書遺言書」、あまり作成例はありませんが「秘密証書遺言書」など3種類あります。「公正証書遺言書」が安全・確実ですが、コストや手間もかかります。令和2年から、自筆の遺言書を法務局で保管してもらえる制度も始まりました。メリット・デメリットを比較検討して、作成を検討してみましょう。

 

もしも遺言書に書かれていない遺産があった場合などその部分は、相続財産管理人を選任する手続が必要になります。「特定遺贈」よりも「包括遺贈」であれば、記載漏れを防ぐことができます。専門家にしっかり関与してもらう方が安心です。

 

最後に

相続人不存在でも、遺言書を書いてあれば、お世話になった人や指定する団体や市町村に遺産を遺すことができます。遺言書がないと、相続財産管理人の選任をしなければならないために、手間と費用がかかることで関係者に負担が掛かります。ましてや、受け取る人がいないと、せっかくの遺産は国庫に入ることになり活かされない事にもなりかねません。

 

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