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増え続ける!相続人が認知症
遺産相続を知る
相続人の中に認知症の人がいるケースの対応法
相続が発生した際に、認知症の人が相続人にいた場合、遺産分割協議はどう進めれば良いか?
➀認知症の人が相続人にいるケース
父親が亡くなり、相続人は母親と子どもという場合、お母さんが認知症という診断されているケースが増えています。相続人に認知症の方がいる場合、相続手続きにどのような問題があるか。
相続人の中に認知症の人がいる場合の問題点
➀-1 認知症の相続人がいるケースでは遺産分割協議はできない
相続が開始されると、亡くなった方の財産は凍結されます。原則として、銀行預金なども下ろせなくなり、不動産も売却などの処分もできなくなります。
凍結を解除するには、遺産分割協議で「相続人はだれか」を確定させなければなりません。ところが、遺産分割協議は、相続人全員の合意が必要です。
そのとき、相続人のお母さんが認知症などで判断能力が低下している場合には遺産分割協議に参加して相続の意思表示をすることができません。そのため、遺産分割協議ができないので原則として遺産の凍結解除ができず、亡くなった父親の預貯金口座からお金を下ろせなくなります。父親名義の不動産については賃貸も売却もできないことになります。
➀-2. 代筆は無効、罪に問われる可能性があります
認知症になった母親が相続人だからといって、遺産分割協議書などに他の相続人が代筆して署名することは無効です。私文書偽造の罪に問われる可能性もあり、絶対にやめるべきです。
➀-3. 認知症の相続人は相続放棄もできません
認知症になり判断能力が低下すると、法律行為はできなくなります。そのため、認知症の相続人は相続放棄をすることはできません。本人に代わり他の相続人が相続放棄の申し立てをしても、代理では家庭裁判所から受理されません。
➁ 遺産分割協議を行うには成年後見制度の利用しかない
それでは、相続人の中に認知症の人がいると遺産分割協議ができなくなるのでしょうか?いえいえ、方法としては1つあります。それは成年後見制度の利用で遺産分割をすることができます。
成年後見制度は、最近増加のしている認知症になったお母さんの代わりに後見人(相続人は不可)がお母さんの財産を管理する制度です。認知症などでご自分の財産管理が難しくなった方の代わりに後見人という役割の人を選んで、後見人が財産管理や預貯金の引き出しなどの役割を行います。
預貯金は、通帳に「お母さんの名前、成年後見人 ●●●●」というように、被後見人・後見人の名前を表記して後見人が管理します。介護の契約や病院などとの契約も後見人が本人の代理人となって行うことができます。さらに、後見人が本人の代理人として遺産分割協議に参加することができます。なお相続放棄については、後見人が家裁の許可を得て手続きすることができます。
お父さんが亡くなる以前に、お母さんの後見人が選任されているときは相続発生後に後見人が遺産分割協議に参加します。なお、お父さんの死後に、遺産分割協議のためお母さんの後見人の選任申立てを家庭裁判所にした場合は、選任手続きに1~3カ月位かかります。もしも相続税の申告が必要な場合には、その期限は10カ月ですから早急な申立てが必要です。
③ 成年後見制度のデメリット
成年後見制度にも利用のデメリット(使いづらい点)があります
③-1. 後見人には親族以外が選ばれる可能性があります
後見人には親族が選ばれずに、士業などの専門家が選ばれる可能性もあるという点です。
成年後見人を誰にするかは、家庭裁判所が決定します。最近の傾向としては、成年後見人の仕事がら親族の割合は下がり、弁護士などの士業の専門家の割合が増える傾向にあります。
「成年後見関係事件の概況」では、令和4年の実績ですが親族が後見人に選ばれた割合は19.1%、親族以外が選ばれた割合は80.9%となっています。この理由は、親族が後見人の申立てを行う件数が減っていることや、後見人候補者として親族が記載していない申立ての件数が多いこともあるといわれています。ただ、誰を後見人に選ぶかということは裁判所が決めますから申立てをしないと分からないのです。
相続の場合には、原則として後見人は専門家が選ばれますから、お母さんの財産管理は後見人が行い、またお母さんの介護施設なども専門家の後見人と家族が話し合って決めていくことになります。
なお、後見人には親族がなれないわけではありません。可能性としては低いかもしれませんが、家族が後見人に選ばれるよう申し立て時に主張などを考えておくことが大切です。
③-2. 後見人には報酬を支払うことになります
成年後見制度のデメリットとして、専門家後見人には報酬を支払うことが必要になります。全国平均で月2万円~3万円、被後見人の財産額によりますが月5~6万円になるケースもあります。また、後見制度は途中で止めることができないことになっていますから、お母さんの後見は亡くなるまで続きますので、報酬も継続します。
③-3. 相続人の思惑とは違う結果になることもあります
認知症のお母さんに後見人が付いたことで遺産分割協議の開始となりますが、相続人(子ども)の思惑と違うことも起こりえます。後見人とは「被後見人の財産を守ること」が使命です。ですから、後見人は法定相続分どおりに遺産分割を行います。
「お母さんは財産を使えないから、子らが相続したい」や「母さんのお世話は子らがするので、子らが財産をもらう」などの理由は、遺産分割協議の中で通りません。後見人は遺産分割協議の内容を家庭裁判に報告しなければなりませんからお母さんの法定相続分を確保することになります。
➃ 「法定相続分で分ける」問題点
相続における遺産分割で、認知症の相続人がいる場合でも法定相続分で分ければ問題ないと考える方もおいでになると思いますが、実際には問題が多くあります。
➃-1. 共有の不動産は売却、賃貸ができない
不動産を「法定相続分」で共有する登記は相続人の1人がすることもできます。
この場合は遺産分割協議もせずに、もちろん後見制度を利用せずに進めることも可能です。ただ、相続した後のことを考えるとあまり意味はない手段といえます。
「法定相続分で登記する」ということは、不動産が子らと認知症の母親と共有状態となります。
共有状態の不動産は全員が合意しないと動かすことはできないために、売却や賃貸をすることができません。
そのためは、認知症のお母さんに後見人をつけることが必要になってくるのです。
➃-2. 相続分の預貯金を払戻はできない
預貯金の相続では、遺産分割協議が整わなければ、「自分の法定相続分を請求する」ことができません。
しかし、「150万円」もしくは「当該銀行にある預貯金額×3分の1×法定相続分」のどちらか少ない額まであれば、遺産分割協議が整わなくても払戻しをすることができます。
その理由は、葬儀費用に使うために払い戻しができます。それは、「預貯金の仮払い制度」と呼ばれています。
➃-3. 相続税の特例は利用できない
「小規模宅地等の特例」や「配偶者の税額の軽減」といった相続税の特例は、遺産分割協議ができないと利用ができません。
⑤ 認知症の家族がいるケースの生前対策
相続人のお母さんが認知症などで判断能力が無いケースでは、遺産分割協議をすることができません。
超高齢社会が進む中で、お父さんの相続において、お母さんが認知症というケースは現在増え続けています。
相続が始まってからのトラブルを回避するには、お父さんが生前に対策を立てておく必要があります。
⑤-1. 遺言を書いておく
一番の対策は、お父さんが元気なうちに「遺言」を書いておくことです。
遺言書に「誰に何を相続させるのか」を決めていれば、遺産分割協議は必要なく不動産や預貯金について、凍結を解除し相続手続きをすることができます。
⑤-2. 家族信託の利用
会社やアパート経営などを経営するお父さんと相続人の子らが家族信託の制度を利用して、子らが承継することを定めておくことで遺産分割協議を回避できます。
お父さんの死後、子らは事前に契約した通りに信託財産を管理、運用、処分できます。
⑤-3. 生前贈与の検討をしておく
不動産や預貯金などの財産は生前贈与を利用して遺産分割する財産をへらしておくのも方法の一つです。
しかし、贈与税に注意しましょう。
⑥ 亡くなった父は認知症だった
亡くなったお父さんが認知症と診断されていた場合は注意しましょう。
お父さんの遺言が残されていて、長男が相続するとなっていた場合は、たいへんです。
なぜなら、財産をもらえない次男は納得いかないので、「父は認知症と診断されていて、遺言を書けなかった。
遺言は無効である」と家庭裁判所に申立てるかもしれません。
遺言無効となってしまうと、遺産分割協議が相続人全員で必要になります。遺産分割で合意できなければ裁判所の調停に進み、相続争いに進む危険性もあります。
「遺言を作るときは元気なうちに」は遺言書作成のキーワードです。「70歳を越えた」「認知症の恐れが出てきた」といった状態で遺言を作るには、「公証役場を利用する」、「診断書を医師にかいてもらう」など対策を考える必要も出てきます。
遺言は、本人が亡くなった後に効力を生じるので、遺言トラブルは相続人同士が争い、立証していくことになります。
だからこそ、遺言作成には注意が必要です。
なお、成年後見制度を利用している人も医師2人以上の立会いがあれば遺言を作ることができます。
⑦ 相続人の母が認知症でよくある質問
Q. 認知症と診断されても遺産分割協議に参加することが、できますか?
認知症の相続人でも、判断能力が無いかどうかは分かりません。
たとえ認知症と診断されていても症状は軽度なものから重度なものまであります。
認知症の症状が軽度であれば、遺産分割協議に参加できますし有効な遺産分割協議もできます。
後見人の利用も不要です。
その際の判断は、相続手続きにおいて金融機関などが判断しますが、この時に医者からの診断書があれば、手続きはスムーズに進む可能性があります。
Q.認知症の相続人につく特別代理人とは誰のことですか?
認知症のお母さんの成年後見人が長男であったケースでは、相続の場合は利益相反することになるため、遺産分割協議については特別代理人を選任してもらいます。
これは、母親の成年後見人である長男がお母さんの相続の利益を無視して、長男に有利な遺産分割協議の内容とする可能性があるので、特別代理人を選任する必要があるのです。
なお、特別代理人は家庭裁判所によって選任されるますが、遺産分割協議のための代理人となるので、報酬の支払いは一度だけとなります。
Q.認知症の相続人がいるとき場合に相談する専門家はだれでしょうか?
生前対策の遺言書を作成は、行政書士、司法書士、弁護士の各士業に依頼するといいでしょう。
成年後見人を依頼する場合は、司法書士や弁護士などに相談することになります。
もしも、相続人同士の争いが発生しそうな場合は、弁護士です。
相続税の申告は税理士に相談することになります。
⑧ まとめ 元気なうちに遺言を作成しましょう
「兎に角、遺言が先です」。遺言さえあれば、残された相続人は遺産分割協議なしで相続手続きが進められるからです。
遺言は、考えが変わったときに変更することができますし「兎に角、遺言」と言われる理由は争いを未然に防ぐことができるからです。
老後を子どもに世話をしてもらうことを考えている「あなたの場合」は、子どもが悩まなくてよい状況を作っておきましょう。
以下のフォームに必要事項をご記入の上、「送信する」ボタンをクリックしてください。
入力がうまくいかない場合は、上記内容をご確認のうえ、メールにてご連絡ください。
送信先アドレス:example@example.com