相続相談福岡センター:〒818-0056 福岡県筑紫野市二日市北2-3-3-205
1.75歳代の高齢者は相続について考えているのか
―「考えているが、行動しない」という二重構造
75歳代は、相続について“考えてはいる”が“行動しない”という特徴があります。
1-1. 75歳は「相続を意識し始める年齢」
厚労省の統計では、 75〜79歳の認知症有病率は10.4%、 80〜84歳では22.4%と急上昇します。
つまり75歳は、 「そろそろ準備しないといけない」 と“頭では理解している”年齢です。
しかし、実務では次のような声が多い:
• 「まだ元気だから大丈夫」
• 「相続のことを考えると気が滅入る」
• 「遺言は必要だと思うけど、まだ早い」
• 「家族が揉めないと思うから大丈夫」
=考えているが、行動には移さない。
2.認知症リスクが迫っても動かない理由
―心理・身体・認知・家族関係・制度理解の5層構造
2-1. 死を連想する行為への本能的抵抗
遺言を書くことは、 「自分の死を具体的に想像する行為」 です。
人間は死を避ける心理(死の防衛機制)を持つため、 高齢者ほど「死を直視する行為」を避けます。
• 遺言を書く → 死を認めるようで嫌
• 財産整理 → 余命を意識してしまう
• 相続の話 → 家族に弱ったと思われそう
=行動を止める最大の心理要因。
2-2. 「まだ大丈夫」という未来回避バイアス
75歳は、
• 車の運転ができる
• 旅行に行ける
• 友人も元気 という状態が多く、 「自分はまだ相続準備をする年齢ではない」 と感じやすい。
しかし現実には、 認知症は80歳を境に急増する。
「まだ大丈夫」 という感覚は、心理学的には 未来回避バイアス と呼ばれ、行動を先延ばしにする典型的な要因。
2-3. 手続きが複雑すぎて理解できない
相続は、
• 戸籍
• 不動産
• 預金
• 税金
• 遺産分割協議 など、専門用語が多く、75歳には理解が難しい。
理解できない → 不安 → 行動停止 という流れが起きる。
特に、 認知症の相続人がいると遺産分割協議ができない という事実は、一般の高齢者はほとんど知らない。
2-4. 「家族に嫌われたくない」心理
遺言を書くことは、 財産の配分=家族の評価を決める行為。
高齢者は、
• 子どもに嫌われたくない
• 兄弟姉妹に恨まれたくない
• 火種を作りたくない という心理が強い。
そのため、 遺言を書くことで誰かが不満を持つのでは? と考え、行動を止めてしまう。
2-5. 認知症の現実を直視したくない
認知症は、 自分の人格が失われる恐怖 を伴うため、 高齢者は話題にすること自体を避ける。
しかし現実には、 認知症になると
• 預金が凍結される
• 不動産が売れない
• 遺産分割協議ができない という問題が発生する。
=直視したくない現実ほど、行動を止める。
2-6. 家族関係の複雑さ
75歳は、
• 子どもが50代
• 兄弟姉妹も高齢
• 親族関係が複雑化 している。
相続の話をすると、 「揉めるのが怖い」 という心理が働き、行動しない。
2-7. 「専門家に相談する」ことへの抵抗
高齢者は、
• お金がかかりそう
• 叱られそう
• 何を聞けばいいかわからない
• 書類を揃えられない という不安を持つ。
=相談行動そのものがハードル。
3.家族が心配を伝える最も効果的な方法
―高齢者の心理構造に合わせた“伝え方”が必要
75歳の高齢者に相続の話をするとき、 正論・事実・危機感では動かない という前提が重要。
高齢者が動くのは、 「自分のため」ではなく「家族のため」 という動機が最も強い。
4.家族が使うべき「伝え方の原則」
原則①:高齢者の“尊厳”を守る
高齢者は、 「自分はまだしっかりしている」 という感覚を大切にしている。
そのため、 「認知症になる前に」 「早くしないと困るよ」 という言い方は逆効果。
原則②:本人ではなく“家族の困りごと”として伝える
高齢者は、 自分のための準備には消極的 だが、 家族が困ることには敏感。
例:
• 「お母さんが困る」→動かない
• 「私たちが困る」→動く
原則③:責めず、お願いベースで伝える
高齢者は、 「やらされている」 と感じると拒否する。
原則④:抽象論ではなく“具体的な困りごと”を示す
例:
• 「相続で困るよ」→響かない
• 「預金が凍結されて、葬儀費用が出せなくなる」→響く
• 「不動産が売れなくて、施設費が払えなくなる」→響く
5.家族が使える“実際の会話テンプレート”
テンプレ①:尊厳を守りながら伝える
「お母さんがしっかりしている今だからこそ、 お母さんの考えをちゃんと聞いておきたいの。」
テンプレ②:家族の困りごととして伝える
「私たちが困らないように、 お母さんの気持ちを教えてほしいだけなんよ。」
テンプレ③:認知症リスクを“本人ではなく制度の問題”として伝える
「認知症になると、銀行が手続きを止める仕組みになっとるらしいとよ。 お母さんが悪いんじゃなくて、制度の問題なんよ。」 (※認知症で預金が凍結されるのは事実)
テンプレ④:専門家に行く理由を“家族の負担軽減”にする
「私たちだけじゃ整理できんけん、 一緒に専門家さんに話を聞きに行ってくれん?」
テンプレ⑤:決断を迫らず、最初の一歩だけお願いする
「今日は決めんでいいけん。 まずは話を聞くだけ、一緒に行ってくれん?」
6.高齢者が実際に動き出す“心理トリガー”
トリガー①:家族の負担を減らしたい
高齢者は、 「家族に迷惑をかけたくない」 という動機が最も強い。
トリガー②:自分の意思を残したい
認知症になると意思が伝えられないため、 「自分の考えを残したい」 という欲求が強まる。
トリガー③:専門家が“味方”だと感じたとき
高齢者は、
• 優しい
• 丁寧
• わかりやすい 専門家に出会うと、急に行動が進む。
7.家族が絶対にやってはいけないNG行動
• 「早くしないと困るよ!」と急かす
• 「認知症になる前に!」と脅す
• 「兄弟が揉めるよ」と不安を煽る
• 「遺言を書いて」と命令する
• 「なんで動かないの?」と責める
=すべて逆効果。行動が完全に止まる。
8.まとめ:75歳は“行動しないのが普通”。だからこそ家族の伝え方が重要
75歳の高齢者は、
• 相続の必要性は理解している
• 認知症リスクも頭ではわかっている
• しかし心理的抵抗が強く、行動しない
という構造にあります。
だからこそ、 家族が「正しい伝え方」をすることで初めて動き出す。
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