遺言書は介護に優先するか?

遺言書は介護に優先するか?

 

父親は認知症です。兄が、「自分に有利な遺言書」を父を連れ出し作らせた。介護している私は、その遺言書に影響されますか?

親の体調が不安定になってくると、将来の相続について考える人も多いと思います。そんなとき、兄や姉などのきょうだいが、親にこっそり遺言書を作らせていたと知ったら…「それって本当に有効なの?」「介護してきた自分の努力は無視されるの?」と、不安や不満が湧いてくるのも無理はありません。

今回は、遺言書の基本的な仕組みや、認知症の親が作成した遺言書の有効性、そして介護などの貢献が相続にどう影響するのかを、できるだけわかりやすく解説していきます。

遺言書ってどんなもの?

遺言書とは、亡くなった人(被相続人)が「自分の財産を誰にどれだけ渡すか」を決めて書き残したものです。遺言書があると、基本的にはその内容に従って遺産が分けられます。

遺言書には主に3つの種類があります:

1. 自筆証書遺言:本人がすべて手書きで作成するもの。紙とペンがあれば作れる手軽さが特徴です。

2. 公正証書遺言:公証役場で公証人に作成してもらうもの。法的なトラブルが起きにくく、確実性が高いです。

3. 秘密証書遺言:内容を秘密にしたまま、公証人に「遺言書があること」だけを証明してもらう形式です。

この中で、最も簡単に作れるのが「自筆証書遺言」。ただし、形式に不備があると無効になることもあるので注意が必要です。

認知症の親が作った遺言書は有効なの?

ここがとても重要なポイントです。遺言書が有効かどうかは、「作成したときに、本人に判断能力があったかどうか」で決まります。

たとえば、認知症がかなり進んでいて、自分の財産や家族のことを理解できない状態だった場合、その遺言書は無効になる可能性があります。

でも、軽度の認知症や、物忘れがある程度であっても、遺言の内容を理解して自分の意思で決めていたなら、有効とされることもあります。

つまり、「認知症=遺言書は無効」とは限らないのです。実際には、遺言書を作ったときの本人の様子や、周囲の証言、医師の診断書などが判断材料になります。必要があれば、家庭裁判所でその有効性が争われることもあります。

 

介護してきた人は報われないの?

「自分はずっと親の介護をしてきたのに、遺言書では兄だけが得をしている…」そんなときに関係してくるのが「寄与分(きよぶん)」という考え方です。

寄与分とは、相続人の中で特に被相続人(親)の財産の維持や増加に貢献した人が、その分多く遺産をもらえるという制度です。

たとえば、こんなケースが該当します:

長期間にわたって無償で親の介護をしていた

親の事業を手伝って財産を増やした

親の生活費を負担していた

ただし、寄与分が認められるにはいくつかの条件があります。

1. 特別な貢献であること:単なる親子の助け合いではなく、他の相続人と比べて明らかに大きな貢献が必要です。

2. 無償で行っていたこと:報酬をもらっていた場合は対象外になることがあります。

3. 継続的かつ専従的であること:一時的な手伝いではなく、長期間にわたって関わっていたことが求められます。

4. 財産の維持や増加に結びついていること:たとえば、介護によって施設に入れる費用が浮いたなど、具体的な効果が必要です。

これらの条件を満たしていれば、家庭裁判所に申し立てることで、法定相続分より多くの遺産を受け取れる可能性があります。

今からできることは?

もし、兄が有利になるような遺言書がすでに作られていたとしても、まだ間に合うかもしれません。

まずは、親がまだ判断能力をある程度保っているうちに、遺言書の内容を見直してもらうことが大切です。自筆証書遺言は何度でも書き直しが可能で、最新の日付のものが有効になります。

さらに、より確実にしたい場合は、公正証書遺言にしておくと安心です。公証人が関与するため、後から「無効だ」と争われにくくなります。

また、介護の実績があるなら、記録を残しておくことも大切です。いつからどんな介護をしていたのか、日記やメモ、写真などが証拠になります。

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まとめ:納得できる相続のために

相続は、お金の問題だけでなく、家族の関係や感情が大きく関わるデリケートな問題です。だからこそ、できるだけ早い段階で親と話し合い、きょうだいとも情報を共有しておくことが大切です。

もし不安があるなら、相続相談福岡センターなどの専門家に相談するのも一つの方法です。
納得のいく形で相続を迎えるために、今できることから少しずつ始めてみましょう。

 

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