自筆証書遺言の作成を法務局でしました

自筆証書遺言の作成を法務局でしました

多くの高齢者が関心を寄せている自筆証書遺言の保管制度の実際を知ろうと、福岡法務局筑紫野支局に当センターの行政書士が遺言の保管制度を利用して申請をしてみました。その実体験と利用の感想をお伝えしてみます。

終活講座のなかで当センターは遺言書作成や相続手続きの実務をお話しする中で、自筆証書遺言を法務局で保管する制度のメリットやデメリットをご説明しています。ところが、講座参加者の方々は実際に作成したことがある方いらっしゃいますが、多くは実際の保管制度の良かった点やここが分からない点など、分からないことばかりです。そこで当センターのスタッフが体験して、その体験談を語る中で、制度について詳しく話していこうと思います。

なお、この記事の内容については、一人の体験者の個人的な感想ですので、あくまでも参考にしていただき、内容について不明な点も出てくると思いますが、その際にはご自身の申請される予定の法務局へお問い合わせ頂きますようお願いします。

 

電話予約から福岡法務局筑紫支局へ行くまで

※予約の方法は3パターンがあります。

①ネット予約

筑紫法務支局手続案内予約専用HPから予約。

②電話予約

 手続きを行う予定の筑紫法務支局へ電話092-922-2881に予約。

③窓口予約

 手続きを行う予定の筑紫法務支局の窓口で予約。

 上記の中から選択をすることになりますが、当センター担当者は①のネット予約で行うことにしました。ネットのため24時間365日いつでも予約が可能です。福岡法務局で検索するとHPからご自分の住所地を管轄する法務支局が出てきますので、その中から選択して予約(日時)をして返事を待つことになります。

なお、法務局は、遺言者の住所地から選択しましたが、多くの方が住所地の法務局を選択すると思われます。

当日は遺言書・保管申請書・必要書類を揃えて窓口へ

 当日は指定された時間の5分ほど前に窓口へ行きました。筑紫支局2Fの窓口で、自分の名前と予約時間を伝えると、さっそく手続きが始まります。

持参するものは、以下の資料です。

 ・自筆証書遺言

 ・遺言者の住民票(本籍地入り)

 ・遺言書保管申請書(3,900円の収入印紙を貼付したもの)

 ・身分証(顔写真の入ったもので免許証・マイナンバーカードなど)

難しい必要書類はありません。

財産を渡す相手の戸籍謄本もいりませんし、自分の戸籍謄本も不要でした。

3,900円の収入印紙については、筑紫支局内の収入印紙売り場で購入することができます。

注:説明の窓口では、本人以外の同席は認められず本人が法務局職員と対応する必要がある

当センター担当者は、自筆証書遺言により財産を受け取る親族と事務所スタッフの3人で受付に行きました。同行された方は後ろの席で座ってお待ちください。」と言われました。

法務局で質問すると、原則として遺言者の方だけで対応していただき、親族の方には同席はご遠慮いただいているとのことです。

これはあくまでも原則なので、遺言者自身の体調不良だったり、会話が難しいような特別の事情があれば同席を認める場合もあるが、基本的には遺言者本人だけで対応をお願いしているという説明でした。

これについては、行政書士などの国家資格者の専門家の同席については認めるということでした。

遺言者本人が高齢なケースでは、十分な対応をしているという印象でした。

法務局に届け出たら「保管証」をもらう

 

 

 法務局の担当者が内容を確認し、形式上の問題がないか確認をした後に「保管証」というものを発行してもらえます(A4サイズで緑色のカラー用紙です)。

この保管証を受け取る際に、遺言書保管についての概略の説明を受けます。

法務局に預けられた遺言書は全て保管番号で管理をされるようです。変更等の届出や遺言書情報証明書を相続人が請求する場合にも、保管証があった方が手続きが早くなって便利だと説明がありました。

(ちなみに再発行はできないそうです)

窓口に着いてから持参した書類の確認を受けて保管証を受け取るまでに、およそ60分ほどかかりました。

保管証を受け取ることができれば、手続きは完了です。

 

自筆証書遺言を書いた感想

 

遺言書を書いて気づいたこと

 当センターの担当者を含めて、私たちは年間を通して遺言書の作成依頼をお受けしています。公正証書遺言の作成を依頼されてそのサポートをさせていただいておりますが、自分で遺言書を作成することの大変さを実感するとは思ってもいませんでした。

実際自分で書いてみると、細かなことがわからなかったり、意外なことが大変だったりして、別の意味で非常に勉強になりました。

細かい点の話になりますが、これから自筆証書遺言の法務局保管を利用される方の参考になればと思います。

A4サイズの便箋は文房具店で販売されていません

 法務局の保管制度で遺言書を預ける場合は遺言書のサイズは「A4」でなければいけません。最初はA4の便箋を買って遺言書を作ろうと思いましたが、実際に文具店に買いに行くと便箋のサイズはほとんどB5ですから、A4サイズの便箋など売っていません。大きな文房具店の丸善にも行ってみましたが、ほかの店でも売っていません。A4サイズのノートは売っていますが、遺言を書くにはどうかと思いやめました。結局、A4の用紙に便箋の罫線を印字して使いました。

全文を自署するのは予想以上に大変

 自筆証書遺言ですから自署しなければいけないことは最初からわかっていましたが、いざ自分で書いてみると大変なことだと思いました。

それは、自分自身の字が下手なこともありますが、なかなか納得のいく字で遺言書を書くことができず、結局4枚も書いたのですが、まあまあ綺麗に書けたものを提出することにしました。

遺言書は自分の子供たち宛てに自分の気持ちを書いてのこすものですが、なかなかきれいな字で書くことのむつかしさを実感することになりました。

しかし、ご高齢な方が遺言書くのは、大変だと思います。当センターの担当者は若いので自分で書くということの難しさを強く感じたようでした。

財産を別紙で目録として特定することに悩みました

 今回は体験で遺言書を作ってみたのですが、財産を財産目録で特定することにしてみました。

不動産については、登記簿謄本を取得して作成したのですが、マンションでしたので、登記簿はページをまたぎ、2ページになっていました。別紙1でいいのか、それとも別紙1と別紙2に分けて記載するのか、悩みました。

法務局へ電話して確認すると、「1つのマンションなら1ページ目に別紙1と書き2ページ目は何も書かなくていい。」ということでした。

細かな点について、自分で書いてみるといろいろと疑問がでてきます。

余白で指摘を受けた

 保管する遺言書や別紙は余白をあけなければなりません。上と右は5mm、左は20mm、下は10mmと決まっていますので注意が必要です。

遺言書は余白が広いので問題はないのですが、別紙で添付する登記簿謄本などは、注意が必要です。下部に遺言者の氏名と印カンを押す際に、余白をオーバーしないように注意されました。

その場で、法務局の職員の方が定規で測ることもあるそうで注意をしなければなりません。

その他の遺言書を保管で注意する点

 法務支局で行う保管手続きは、ここまでに書いた通りですが、ご自分で行かれて申請する際に注意しておく点をまとめました。

法務局がしてくれることは遺言書を保管するだけです

 当センターが今回行った自筆証書の保管の利用体験では、提出した遺言書が法律上も手続上でも不備・漏れは一切ない自筆証書遺言です。

ところが、この制度を利用するみなさま方はあくまで一般の方ですから、法律上内容に問題がある遺言書を保管申請してしまう問題が必ず出てくる可能性があります。

法務局では遺言の形式面だけを審査することになっており、遺言書の内容については一切関与しません。

法務局は遺言について相談に乗りません

 法務局の職員は、遺言について一切の相談とアドバイスに応じてくれません。質問を受けたとしても回答をしないことになっています。

このことは、遺言書の内容によって当事者間で紛争が起きたとしても、法務局が巻き込まれることがないようにするためでしょう。法務局では、遺言書を預かるだけの立場ですから、遺言書が原因で揉めるようなことになっても、それは遺言者本人とその関係者の問題だということになります。

なお、法務局の窓口で自筆証書遺言と公正証書遺言のどちらにすべきかという質問も受けないそうです。

法務局に保管しても意思能力の担保にはならない

 自筆証書遺言の争いで多くあるのが、作成時点で自分の意思で書いたかどうかという問題があります。公正証書遺言の場合には、公証人が本人確認及び意思確認を行ったうえで作成されているため、意思能力の担保がなされるというのは当然なことですが、自筆証書遺言については、それはありません。

自筆証書遺言の保管制度を利用すれば法務局職員の対面で手続きを行うことになり、担保されているということになりそうですが、これも法務局はあくまでも遺言を保管するだけですので、受け付けた時点で本人の意思能力を一切保証するものではないという立場のようです。

もちろん受付で筆跡鑑定などしませんから、持参した遺言書が本当に本人が書いたかどうかなど、法務局職員は一切確認をしないことになります。

内容に不備のある自筆証書遺言を量産する?

 重ねて申し上げますが、法務局の立場はあくまでも自筆証書遺言を保管するだけということです。もちろん遺言書の内容についてアドバイスしてくれるもこともありません。

つまり、遺言書の形式さえ揃っていれば、法務局は保管を受け付けますので、遺言の内容に不備があることに気が付くのは、本人が死亡した後の問題だということになります。

確かに手続きが簡単で費用も安く誰でも気軽に遺言を書けることになりました。しかし、その手軽さ故に、実際の遺言執行時点で遺言の不備に気がつき、残された相続人達に迷惑がかかってしまう事態が多く発生すると思われます。

 

自筆証書遺言保管制度のメリット

 この自筆証書遺言保管制度を利用した場合のメリットについて書いておきます。費用が安いのは当然のことなので、それ以外の部分について触れてみたいと思います。

●検認がいらない

 検認がいらないのはメリットです。家庭裁判所の検認手続きは非常に時間がかかって面倒ですし、何よりも他の相続人と顔を合わせて行うことに精神的にも厳しい場面となりますから、検認をしなくてよいのは非常に助かります。

●死亡したら指定した人に遺言書の保管を通知してくれる

 この点では公正証書遺言より優れています。公正証書遺言は、遺言者が死亡しても遺言を利用して相続手続きをしなければ意味がありません。しかし、自筆証書遺言の保管制度を使えば死亡時に通知人へ法務局から通知がいきます。つまり、遺言実現の確実性が高まります。

●保管しなくてすむ

 これまでの自筆証書遺言は、さくせいしても保管する場所で困っている方が多くいました。仏壇の下などの見つかりにくい場所にしまって、遺言書の存在を知らずに遺産分割されてしまう可能性や、見つかりやすい場所で相続人に知られて改ざんされてしまうリスクもありました。ところが遺言書を法務局が保管してくれることで、遺言書の内容を知られることなく、死亡時通知人に通知されれば、発見されないまま遺産分割がされてしまうというリスクもありません。

遺言書保管制度のデメリット

 ここまで保管時点でのお話をしてきましたが、遺言書を保管した後に気になったこともお伝えしようかと思います。

法務局で保管自体は難しくありませんが、面倒なことも存在します。

まとめておきますので、参考にどうぞ。

変更届は面倒です

 それは、遺言者の氏名、出生年月日、住所、本籍、戸籍の筆頭者、電話番号について、このいずれかに変更があった場合は、変更届をしなければならないことになっています。

この中で変更の可能性が高いのは、遺言者本人の住所、本籍、電話番号だと思います。これらに変更が生じた際には、法務局へ届出をしなければいけないのは非常に面倒です。

しかし、もしも変更が生じたとしても法務局へ変更の届出をしないケースが多く発生すると思われます。

受遺者・遺言執行者・死亡時通知人の変更届を忘れる可能性が高い

 遺言者だけでなく、遺言執行者などに変更が生じた場合も同様に変更届をしなければいけません。しかし、遺言執行者などが遺言者に言わないまま住所変更等をしてしまうケースでは、遺言者は気づかずそのままになってしまうことが出てくるはずです。また、死亡時に通知する方の住所が変わってしまえば、当然のことながら、死亡したとしても法務局から通知が届くことはありません。

さらに、高齢な遺言者が認知症等を患ってしまったら、誰が変更届をするのでしょうか。疑問に思うのは私たちだけでしょうか。

検認は不要だが戸籍謄本を全て集めなければいけない

 保管制度のメリットとして検認が不要とだと宣伝されていますが、遺言者が死亡した後に、遺言書情報証明書を取得する際に、①遺言者の出生から死亡までの戸籍謄本と②相続人全員の住民票を求められます。これは、検認のさいにも出生から死亡までの戸籍謄本と相続人全員の住民票を求められます。確かに保管制度を使えば家裁での検認手続きを回避することができますが、結局被相続人の出生から死亡までの連続する戸籍謄本や相続人全員の住民票を取得する手間は変わりません。つまり、執行時の手続きが大きく簡単になるわけではないのです。

なお、公正証書遺言の場合には、遺言者の死亡記載の戸籍と、財産を受け取る相続人の戸籍謄本だけですぐに執行できますから、相続手続きは公正証書遺言の方がはるかに楽です。

 

保管制度開始後の公正証書遺言の件数

 法務局の自筆証書遺言書保管制度の利用件数は、制度開始後に急増しており、公正証書遺言より“増えた”わけではないものの、存在感は確実に拡大しています。 ただし 件数そのものは依然として公正証書遺言が圧倒的に多い というのが最新データから読み取れる状況です。

◆ 最新データで比較するとどうか(2024〜2025年)

● 自筆証書遺言書保管制度(法務局)

2020年7月開始

2023年:19,336件

2024年:23,419件(過去最多)

2025年7月時点累計:約101,968件(年間は2万台後半〜3万件弱の見込み)

→ 制度開始から5年弱で累計10万件超。利用は急増中。

● 公正証書遺言

2023年:118,981件

2024年:128,378件(過去最多)

→ 年間10万件超で、規模は自筆証書遺言保管制度の約5倍。

◆ 結論:どちらが「増えた」か?

● 増加率で見ると

自筆証書遺言書保管制度の方が圧倒的に伸びている。 制度開始後わずか数年で年間2万件台→3万件弱へと急増。 伸び率は2024年時点で指数180超とされ、急成長が確認できます。

● 件数そのものでは

公正証書遺言が依然として圧倒的に多い(年間12〜13万件)。 費用が高くても「確実性」を求める層が多く、件数はむしろ増加傾向。

◆ 実務的な意味:利用構造が変わりつつある

自筆証書遺言(法務局保管)は“新しい標準”として急速に普及

o 低コスト(3,900円)

o 紛失・改ざんリスクが低い

o 検認不要 → 高齢者・富裕層を中心に利用が広がっている

公正証書遺言は依然として“王道”

o 法的チェックが入り、方式不備のリスクがほぼゼロ

o 複雑な内容に強い → 年間件数はむしろ増加し続けている

 

当センターのメンバーが保管制度を利用した感想

 

 自筆証書遺言の保管制度ですが、使い勝手がいいのですが、手続きとしてまだまだといった感じです。

自筆証書遺言の保管制度はまだはじまったばかりの制度ですから、これからどうなっていくのかわかりません。おそらく自分で動かれる方は自筆証書遺言(保管)を利用して、子供達世代が親に遺言を書いてほしいと考える場合には公正証書遺言を利用する流れが主流になるのではないでしょうか。

あえて専門家の立場から一言いわせていただくと、自筆証書遺言の保管制度を使う方は、必ず専門家のアドバイスを受けてから利用されることをお勧めします。

その理由としては、せっかく作った遺言がもとで残された家族が争いになるのでは意味がありません。

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