相続が始まったらすべきこと 筑紫野・福岡

「相続が始まったらすべきこと」 遺言がある場合/ない場合の両方を、70歳以上の高齢者も理解できる体系的にまとめます。

◆相続が始まったらすべきこと

―遺言がある場合とない場合で何が違うのか、やさしく解説―

1 相続は「ある日突然」始まります

人が亡くなると、その瞬間に法律上の「相続」が始まります。 相続は、家族の気持ちの整理とは関係なく、時間の流れに合わせて淡々と進んでいきます。 役所の手続き、銀行の手続き、年金の手続き、そして財産の名義変更。 これらは、遺族が悲しみの中でも進めなければならないものです。

そして、相続が始まったときに最も大きく影響するのが 「遺言があるか、ないか」 という一点です。

遺言がある場合は、故人の意思が道しるべとなり、手続きはスムーズに進みます。 遺言がない場合は、家族全員で話し合いをしなければならず、そこが大きな負担になります。

ここからは、相続が始まったときに何をすべきかを、 遺言がある場合/ない場合の2つに分けて、順番にやさしく解説していきます。

◆2 まず最初に行うこと(遺言の有無に関係なく)

① 死亡届の提出

病院で死亡診断書を受け取り、市区町村役場へ死亡届を提出します。 提出期限は「死亡の事実を知った日から7日以内」です。

② 役所での主な手続き

国民健康保険の資格喪失

後期高齢者医療の資格喪失

介護保険の資格喪失

年金の停止手続き

障害者手帳などの返納 これらは役所でまとめて案内してもらえます。

③ 葬儀・火葬・納骨

葬儀社との打ち合わせ、火葬許可証の取得、納骨の日程調整などを行います。

④ 生命保険の請求

生命保険は「相続財産ではありません」。 受取人が指定されていれば、その人が直接受け取れます。 請求期限は3年以内ですが、早めに進める方が安心です。

ここまでは、遺言の有無に関係なく必要な手続きです。 ここから先が、遺言の有無によって大きく変わります。

 

◆3 遺言がある場合の相続手続き

遺言がある場合は、故人の意思が明確なため、手続きは比較的スムーズです。 ただし、遺言の種類によって進め方が異なります。

① 遺言の種類を確認する

遺言には大きく2種類あります。

●自筆証書遺言

自分で書いた遺言。 法務局で保管されている場合と、自宅などで保管されている場合があります。

●公正証書遺言

公証役場で作成した遺言。 原本は公証役場に保管され、家族は「正本」「謄本」を持っています。

② 自筆証書遺言がある場合の手続き

自筆証書遺言が見つかったら、まず「家庭裁判所の検認」が必要です。 検認とは、遺言書の内容を確認し、偽造や変造を防ぐための手続きです。

●検認の流れ

1. 家庭裁判所へ申立て

2. 相続人全員へ通知

3. 裁判所で遺言書を開封

4. 検認済証明書の発行

検認が終われば、遺言の内容に沿って財産の名義変更ができます。

③ 公正証書遺言がある場合の手続き

公正証書遺言は、家庭裁判所の検認が不要です。 そのため、すぐに遺言の内容に沿って手続きを進められます。

④ 遺言執行者が指定されている場合

遺言に「遺言執行者」が書かれている場合、その人が相続手続きを進めます。 遺言執行者は、相続人の代理人ではなく、故人の意思を実現するための役割です。

●遺言執行者の主な仕事

銀行の解約・名義変更

不動産の名義変更

相続人への財産の引き渡し

相続人への説明・報告

遺言執行者がいる場合、相続人同士が話し合う必要はありません。 これが遺言の大きなメリットです。

⑤ 遺言がある場合の相続の流れ(まとめ)

1. 遺言書の確認

2. 自筆証書遺言なら家庭裁判所の検認

3. 遺言執行者がいれば手続き開始

4. 銀行・不動産などの名義変更

5. 財産の引き渡し

遺言がある場合は、故人の意思に沿って淡々と進むため、 相続人同士の話し合いは不要です。

◆4 遺言がない場合の相続手続き

遺言がない場合は、相続人全員で「遺産分割協議」を行う必要があります。 これが相続の中で最も負担が大きく、トラブルが起きやすい部分です。

① 相続人を確定する

まず、誰が相続人なのかを戸籍で確認します。

●相続人の例

配偶者

子ども

子どもが亡くなっている場合は孫

子どもがいない場合は父母

父母が亡くなっている場合は兄弟姉妹

兄弟姉妹が相続人になるケースは、特に話し合いが難しくなります。

② 財産を調べる

次に、故人の財産を調べます。

●主な財産

銀行預金

不動産

株式・投資信託

貸金庫

借金(負の財産)

財産調査は、相続人全員が納得できるように、丁寧に行う必要があります。

③ 遺産分割協議(家族会議)

遺言がない場合、相続人全員で話し合いをして、 「誰が何を相続するか」を決めます。

●遺産分割協議のポイント

相続人全員が参加する

一人でも反対すると成立しない

兄弟姉妹が多いほど難しくなる

不動産があると意見が割れやすい

高齢の相続人が多い場合、連絡が取れない、判断能力が不安、体調が悪いなど、 話し合いが進まない理由が増えていきます。

④ 遺産分割協議書の作成

話し合いがまとまったら、協議書を作ります。 協議書には相続人全員の署名・押印が必要です。

⑤ 名義変更

協議書に基づいて、銀行や法務局で名義変更を行います。

⑥ 遺言がない場合の相続の流れ(まとめ)

1. 相続人の確定

2. 財産調査

3. 遺産分割協議

4. 協議書の作成

5. 名義変更

遺言がない場合は、家族全員の合意が必要なため、 時間も労力もかかり、トラブルが起きやすくなります。

 

◆5 遺言がある場合とない場合の違い(やさしく比較)

項目 遺言がある場合 遺言がない場合

手続きの進み方 故人の意思に沿って淡々と進む 家族全員で話し合う必要

必要な書類 遺言書、公正証書遺言なら検認不要 協議書、相続人全員の署名押印

相続人同士の負担 少ない 大きい

トラブルの可能性 低い 高い

不動産の扱い 遺言通りに名義変更 売る・住む・貸すで意見が割れやすい

相続人が疎遠な場合 手続き可能 連絡が取れず進まないことがある

◆6 遺言があると相続が「楽になる」理由

高齢者の相続で最も大きな問題は、 「相続人同士が話し合いをする体力・気力がない」 という点です。

遺言があると、

• 話し合い不要

• 手続きが早い

• 相続人の負担が少ない

• トラブルが起きにくい

というメリットがあります。

特に、

• 兄弟姉妹が多い家庭

• 不動産が主な財産の家庭

• 相続人同士が疎遠な家庭

• 子どものいない夫婦

• 再婚家庭 では、遺言があるかどうかで相続の難易度が大きく変わります。

◆7 相続が始まったら「専門家に相談すべきタイミング」

相続は、家族だけで進めると負担が大きく、間違いも起きやすいものです。 次のような場合は、早めに専門家へ相談することをおすすめします。

• 相続人が多い

• 相続人同士が疎遠

• 不動産がある

• 借金があるかもしれない

• 遺言があるが内容が難しい

• 遺言執行者がいない

• 協議がまとまらない

• 相続人の一人が協力してくれない

相続は「早めの相談」が一番の解決策です。

◆8 まとめ

相続は、遺言があるかないかで手続きの負担が大きく変わります。

●遺言がある場合

故人の意思に沿って淡々と進む。 話し合い不要。 トラブルが少ない。

●遺言がない場合

相続人全員で話し合いが必要。 不動産があると意見が割れやすい。 疎遠な相続人がいると進まない。

70歳以上の方々は、 「自分の相続がどうなるか不安だけど、動くのは面倒」 という心理が強い年代です。

そのため、 相続が始まったときに家族が困らないように、今できる準備がある というメッセージを添えると、行動につながりやすくなります。

 

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