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保管証書遺言(デジタル遺言)とは、パソコンやスマホで作成した遺言データを法務局に保管してもらい、遺言者本人が全文を口述することで成立する、新しい「普通方式の遺言」です。 2026年6月17日に成立した改正民法で創設され、公布から3年以内に施行されます。 つまり 2028〜2029年頃に実際に利用開始される見込みです。
保管証書遺言(デジタル遺言)とは何か
〜パソコン・スマホで作る新しい遺言方式を12000字で徹底解説〜
1. 制度創設の背景
日本の遺言制度は長らく「自筆証書遺言」と「公正証書遺言」が中心でした。 しかし高齢化・デジタル化の進展により、次のような課題が顕在化していました。
• 手書きの負担が大きい(震え・視力低下・長文の記述が困難)
• 形式不備で無効になりやすい(日付漏れ・押印忘れ・訂正方法の誤り)
• 自宅保管の紛失・隠匿・改ざんリスク
• 公正証書遺言は費用が高く、証人2名の確保が負担
• デジタル資産(暗号資産・ネット銀行・SNS)の承継が紙の遺言では難しい
これらの課題を解決するため、2026年の民法改正で、 「保管証書遺言」という新しい遺言方式が創設されました。
2. 保管証書遺言の法的な位置づけ
保管証書遺言は、民法に新設された「普通方式の遺言」の一つです。 従来の分類は以下のとおりでした。
• 自筆証書遺言
• 公正証書遺言
• 秘密証書遺言
• 特別方式遺言(危急時・隔絶地など)
ここに新たに 「保管証書遺言」 が加わります。
つまり、自筆証書遺言と公正証書遺言に並ぶ第三の主要方式として位置づけられます。
3. 保管証書遺言の最大の特徴
① パソコン・スマホで遺言本文を作成できる
全文を手書きする必要がなく、 キーボード入力・音声入力・家族の代筆入力も可能です。 (ただし「氏名の自書=署名」は必要)
② 法務局に保管されることで効力が生じる
自宅保管ではなく、 法務局(遺言書保管所)に保管されることが成立要件です。
③ 遺言者本人が全文を口述する
遺言書保管官の前で、 遺言の全文を読み上げる(口述)ことが方式要件です。 ウェブ会議での口述も可能。
④ 押印は不要
改正民法により、 すべての遺言方式で押印義務が廃止されました。
⑤ 家庭裁判所の検認が不要
法務局保管のため、 相続開始後の検認手続きが不要です。
4. 保管証書遺言の作成手順(実務イメージ)
① 遺言の全文を作成
• パソコン
• スマートフォン
• タブレット
• 書面(プリントアウト)
いずれでも作成可能。 電子データの場合は「氏名の記録」が必須。
② 署名(または電子署名)
電子データの場合は、 電子署名(マイナンバーカード等)が想定されています。
③ 法務局へ保管申請
• 書面提出
• データ送信
• 郵送
• オンライン申請(予定)
④ 遺言者本人が全文を口述
• 法務局で対面
• ウェブ会議で非対面
• 通訳人の利用
• 筆談による代替も可能
⑤ 法務局が保管
保管された日が「作成日」として記録されます。
5. 既存の遺言方式との比較
以下は、専門家向けに要点を整理した比較です。
項目 自筆証書遺言 公正証書遺言 保管証書遺言(新方式)
作成方法 全文手書き 公証人が作成 PC・スマホで作成
署名 自書 自書 自書(電子署名可)
押印 必要(改正後廃止) 必要(紙の場合) 不要
証人 不要 2名必要 不要
保管 自宅 or 法務局 公証役場 法務局保管必須
検認 必要(保管制度利用時は不要) 不要 不要
費用 無料(保管制度は3,900円) 数万円〜 未定
安全性 紛失・改ざんリスク 高い 法務局保管で高い
利用開始 現行 現行 公布後3年以内(未施行)
(比較内容は複数の専門記事を総合)
6. 保管証書遺言のメリット(専門家視点)
① 手書き不要で高齢者の負担が激減
震え・視力低下・長文の記述が困難な方でも作成可能。 訂正も容易で、形式不備のリスクが大幅に減少。
② 紛失・隠匿・改ざんリスクがほぼゼロ
法務局保管のため、 自筆証書遺言最大の弱点が解消されます。
③ デジタル資産の承継が容易
暗号資産・ネット銀行・SNS・有料アカウントなど、 紙の遺言では扱いにくかった資産の目録化が容易。
④ 証人不要で公正証書遺言より手軽
公正証書遺言のように証人2名を確保する必要がありません。
⑤ 検認不要で相続人の負担が軽い
相続開始後の家庭裁判所の手続きが不要。
⑥ オンラインで完結可能
法務局への出頭が不要となるため、 外出困難な高齢者でも利用しやすい。
7. 保管証書遺言のデメリット・注意点
① 口述が必須
全文を読み上げる必要があるため、 認知機能の低下がある方は負担になる可能性があります。
② 法務局保管が必須
自宅保管はできず、 必ず法務局に提出する必要があります。
③ 費用は未定
公正証書遺言よりは安いと予想されますが、 自筆証書遺言よりは高くなる可能性があります。
④ データ作成の「なりすまし」懸念
家族が勝手に作成したデータではないか、 という懸念が生じるため、 電子署名+口述で真正性を担保する仕組みになっています。
8. 施行スケジュール
2026年6月17日成立。 施行は以下のとおり段階的です。
• 押印廃止:公布から1年以内
• 成年後見制度の見直し:2年6か月以内
• 保管証書遺言:3年以内(最も遅い)
つまり、 2028〜2029年頃に利用開始される見込みです。
9. 実務への影響
① 遺言作成支援のスタイルが変わる
• 手書きの補助 → データ作成支援へ
• 財産目録のデジタル化が標準化
• デジタル資産の整理が必須項目に
② 高齢者の遺言作成率が上がる
手書きの負担がなくなるため、 「書きたいけど書けない」層が確実に増える。
③ 公正証書遺言との棲み分け
• 公正証書遺言:複雑な内容・遺言執行者指定・強い証明力
• 保管証書遺言:手軽・オンライン・紛失リスクゼロ
④ 相続人の手続きが簡素化
検認不要のため、 相続開始後の初動がスムーズ。
10. どんな人に向いているか
◎ 保管証書遺言が特に向く人
• 手書きが困難な高齢者
• デジタル資産を多く持つ人
• 公正証書遺言ほどの厳格性は不要だが、紛失リスクを避けたい人
• 外出が難しくオンラインで完結したい人
◎ 公正証書遺言が向く人
• 遺言内容が複雑
• 遺言執行者を確実に指定したい
• 相続人間の対立が予想される
• 認知機能に不安があり、専門家の関与が必須
11. 専門家としての総合評価
保管証書遺言は、 自筆証書遺言の弱点(手書き・紛失・形式不備)をほぼ解消しつつ、 公正証書遺言ほどの費用・手間をかけずに作れる「中間的な方式」です。
特に高齢者・デジタル資産保有者にとっては、 今後のスタンダードになる可能性が高いと評価できます。
12. まとめ
保管証書遺言(デジタル遺言)は、 日本の遺言制度を大きく変える革新的な方式です。
• PC・スマホで作成
• 法務局保管で紛失ゼロ
• 押印不要
• 証人不要
• 検認不要
• オンラインで完結
• デジタル資産に強い
施行は 公布から3年以内(2028〜2029年頃)。 高齢者の負担を大幅に減らし、相続トラブルの予防に大きく寄与する制度です。
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