墓じまいは死後事務委任契約でも本人でもできます

墓じまいは死後事務委任契約でも本人でもできます

死後事務委任契約で「墓じまい」を依頼していても、墓じまいそのものは“生前に本人が行うことも可能”です。 ただし、生前にできる部分と、死後でなければできない部分が法律上明確に分かれているため、その境界を正しく理解しておく必要があります。

以下では、 ・生前に本人ができる墓じまいの範囲 ・死後事務委任契約で依頼するべき範囲 ・祭祀承継者の問題 ・行政手続き(改葬許可)との関係 ・生前に墓じまいを進めるメリット・デメリット ・契約書に書くべきポイント を解説します。

1. 墓じまいは「生前でもできる」──ただし法律上の条件がある

墓じまいとは、 ①墓石の撤去 ②更地化 ③墓地使用権の返還 ④遺骨の移動(改葬) を行う一連のプロセスです。

墓じまいは、法律上「祭祀(さいし)承継者」が行うべき行為とされています(民法897条)。

つまり、 本人が生前に祭祀承継者である場合は、墓じまいを自分で行うことができる。 これは法律上まったく問題ありません。

■生前に本人ができること

墓地管理者(寺院・霊園)との協議

改葬先(永代供養墓・納骨堂・散骨など)の決定

改葬許可申請(役所)

石材店との墓石撤去契約

墓地使用権の返還

費用の支払い

これらはすべて本人が生前に行うことができます。

2. 「死後事務委任契約で墓じまいを依頼した場合」はどうなる?

死後事務委任契約は、 本人の死後に発生する事務を第三者に委任する契約です(民法656条の準委任)。

墓じまいは「祭祀承継」に関する行為であり、 遺言執行者ではなく、死後事務委任契約の受任者が行うのが適任とされています。

■死後事務委任契約で依頼できる墓じまいの範囲

死後の遺骨の取り出し

改葬許可申請

永代供養墓への納骨

墓石撤去の手配

墓地管理者への返還手続き

費用の支払い(預託金・遺産からの支出)

つまり、 本人が亡くなった後にしかできない部分は、死後事務委任契約で依頼する必要がある。

3. 生前に本人が墓じまいを進められるかの「ポイント」

ここが最も重要です。

■判断ポイント①

本人が祭祀承継者であるか?(民法897条)

祭祀承継者とは、 「墓・仏壇・祭具などの祭祀財産を承継する者」です。

本人が祭祀承継者であれば、 生前に墓じまいを自分で行うことができる。

■判断ポイント②

遺骨が誰のものか?(親・配偶者・祖父母など)

墓じまいは「遺骨の改葬」が必ず伴います。 遺骨の改葬は、 祭祀承継者の同意が必須です。

本人が祭祀承継者でない場合、 生前に墓じまいを進めることはできません。

■判断ポイント③

墓地管理者(寺院・霊園)が生前の墓じまいを認めるか?

寺院によっては、 「生前の墓じまいは檀家離れにつながる」として慎重な場合があります。

 

4. 生前に墓じまいを進めるメリット

■メリット①

自分の意思で確実に進められる

死後は、

• 相続人がいない

• 親族が反対する

• 寺院が遺族との協議を求める などの理由で、スムーズに進まないことがあります。

生前なら、 本人の意思で確実に進められる。

■メリット②

費用を自分で把握し、支払える

墓じまいの費用は 15万〜50万円(墓石撤去) +改葬先の永代供養料(10万〜50万円) が一般的です。

生前なら、 費用を自分で確認し、支払うことができます。

■メリット③

死後事務委任契約の負担が減る

死後の事務量が減るため、 受任者の負担も軽くなります。

5. 生前に墓じまいを進めるデメリット

■デメリット①

親族とのトラブルが起こりやすい

「勝手に墓を閉じた」と反発されるケースがあります。

■デメリット②

寺院との関係が悪化する可能性

檀家離れと受け取られる場合があります。

■デメリット③

遺骨の移動先を決める必要がある

永代供養墓・納骨堂・散骨など、 生前に決める必要があります。

6. 生前に墓じまいを進める場合の「具体的な流れ」

以下は実務で使われる標準的な流れです。

①寺院・霊園へ相談

墓じまいの意思を伝える。

②石材店へ見積依頼

撤去費用を確認する。

③改葬先を決める

永代供養墓・納骨堂・散骨など。

④役所へ改葬許可申請

必要書類:

• 改葬許可申請書

• 埋葬証明書

• 受入証明書(改葬先)

⑤墓石撤去

石材店が作業。

⑥墓地使用権の返還

寺院・霊園へ返還。

 

7. 死後事務委任契約で墓じまいを依頼する場合の「流れ」

死後事務委任契約で墓じまいを依頼する場合、 以下の流れになります。

①本人の死亡

契約が発効。

②受任者が寺院・霊園へ連絡

遺骨の取り出し日程を調整。

③改葬許可申請

受任者が役所へ申請。

④墓石撤去

石材店を手配。

⑤永代供養墓へ納骨

受任者が納骨を完了。

8. 生前に墓じまいを進めるか、死後に任せるかの「判断表」

判断項目 生前に本人が行う 死後事務委任契約で行う

本人が祭祀承継者か ○可能 ○可能

寺院との協議 ○本人が行う ○受任者が行う

改葬許可申請 ○本人が行う ○受任者が行う

墓石撤去 ○本人が契約 ○受任者が契約

永代供養墓への納骨 ○本人が生前に納骨可 ○死後に納骨

費用の支払い ○本人が支払う ○預託金・遺産から支払う

9. 結論──「生前でもできるが、死後事務委任契約との役割分担が重要」

まとめると、以下の通りです。

■結論

死後事務委任契約で墓じまいを依頼していても、本人が生前に墓じまいを行うことは可能。

ただし、

本人が祭祀承継者であること

寺院・霊園が生前の墓じまいを認めること

改葬先を決めておくこと が必須条件です。

そして、 生前にできる部分と、死後でなければできない部分を明確に分けておくことが重要です。

 

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