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なぜ高齢者は遺言と任意後見契約を同時に作成しないのか
高齢者と家族それぞれに立場からまとめました
高齢者の「遺言作成」と「任意後見契約」が同時に作成しない最大の理由は、 高齢者本人・家族それぞれの心理構造が“まったく別方向”を向いているため、 同じタイミングで行動の意思決定が起きないからです。
◆「同時に作成しない」のか
高齢者と家族は、 同じ制度(遺言・任意後見)を聞いても、まったく違う不安を抱き、 まったく違う優先順位で物事を判断するため、 同じタイミングで行動が起きません。
• 高齢者 → 「自分の死後のことはまだいい」「認知症の話は怖いから避けたい」
• 家族 → 「親の財産管理が大変」「認知症になったら困るけど、今はまだ元気」
つまり、 両者の不安の強さ・種類・タイミングが一致しない。
その結果、 遺言と任意後見を「同時に」決断する心理状態が生まれないのです。
高齢者の立場の「遺言」と「任意後見」
①高齢者は「死後の不安」より「認知症の不安」が強い
高齢者は一般的に次のように感じます。
• 死後のこと → まだ先、急がない
• 認知症 → 今すぐは嫌だが、考えると怖い
つまり、 遺言の不安は弱い。 任意後見の不安は強い。
しかし、強い不安は「行動の引き金」になる一方で、 強すぎる不安は“回避行動”を生むという特徴があります。
任意後見の話を聞くと、 「認知症になるかもしれない」という強烈な不安が刺激されるため、 行動どころか、話題そのものを避けたくなる。
②高齢者は「自分の弱り」を認めたくない
任意後見契約は、 「自分が弱る未来を認める行為」です。
高齢者は次のように感じます。
• 自分はまだしっかりしている
• 認知症の話は縁起でもない
• 他人に財産管理を任せるなんて早すぎる
つまり、 任意後見契約は“自分の衰えの宣言”に見えてしまう。
遺言は「死後の話」なので、 「まだ元気な自分」を否定しません。
だから、 遺言は受け入れやすいが、 任意後見は受け入れにくい。
③高齢者は「家族に迷惑をかけたくない」と言いながら行動しない
高齢者は口ではこう言います。
• 子どもに迷惑をかけたくない
• 甥姪に負担をかけたくない
• しっかり準備しておきたい
しかし、実際には行動しません。
理由は明確です。
●行動のための“具体的な後押し”がない
高齢者は 「誰かに背中を押されないと動かない」 という心理構造を持っています。
• 家族が強く勧める
• 相談員が具体的に誘導する
• 友人が同じ契約をした
• 病気や事件が起きた
こうした“外部の強い刺激”がないと、 行動は起きません。
④高齢者は「制度の複雑さ」で行動が止まる
任意後見契約は、
• 公証役場
• 監督人
• 家裁
• 財産管理 など、複雑な要素が多い。
高齢者は次のように感じます。
• 難しそう
• 手続きが面倒
• 失敗したら怖い
• 誰を後見人にすればいいのか分からない
つまり、 制度の複雑さが行動のブレーキになる。
遺言は比較的シンプルなので、 まだ受け入れやすい。
家族の立場から見た「遺言」と「任意後見」
①家族は「今はまだ困っていない」
家族は次のように考えます。
• 親はまだ元気
• 認知症はまだ先
• 財産管理も今は問題ない
• 手続きは面倒だから後回し
つまり、 家族は“今困っていない”ので行動しない。
任意後見契約は、 「将来のための準備」ですが、 家族は将来の不安を具体的に想像できません。
②家族は「後見人になりたくない」
家族が後見人になりたがらない理由は明確です。
• 親の財産管理は責任が重い
• 兄弟間のトラブルが怖い
• 親の生活費や医療費の管理が面倒
• 親の通帳を触ると疑われる
• 親の介護と仕事の両立が難しい
つまり、 家族は“責任の重さ”を嫌う。
甥姪ならなおさらです。
③家族は「任意後見のメリットを理解していない」
家族は制度を知らないため、 次のように誤解しています。
• 任意後見は大げさ
• 認知症になったら成年後見でいい
• 家裁が選んでくれるなら楽
• 親の財産はそんなに多くない
• 自分が後見人になる必要はない
つまり、 家族は“任意後見の必要性”を感じていない。
④家族は「遺言の方が優先度が高い」
家族にとっては、 遺言の方がメリットが明確です。
• 相続トラブルを避けたい
• 手続きが楽になる
• 不動産の名義変更がスムーズ
• 兄弟間の争いを避けたい
つまり、 家族は遺言には賛成しやすいが、 任意後見には賛成しにくい。
高齢者と家族の心理は「一致しない」
①高齢者の不安
• 認知症の不安 → 強いが避けたい
• 死後の不安 → 弱いが受け入れやすい
②家族の不安
• 認知症の不安 → まだ具体的でない
• 死後の不安 → 相続で困るから強い
つまり、 両者の不安の強さが逆。
• 高齢者 → 任意後見は怖い
• 家族 → 遺言が重要
このズレが、 「同時に成立しない」最大の理由です。
なぜ「おひとり様」は任意後見をしないか
①後見人候補がいない
おひとり様高齢者は、
• 子どもがいない
• 甥姪が遠方
• 親族と疎遠
• 信頼できる人がいない
つまり、 任意後見人を選べない。
②専門職後見人を選ぶと費用が気になる
専門職後見人を選ぶと、
• 月2〜3万円の報酬
• 財産管理の監督費用 などが発生する。
高齢者は次のように感じます。
• お金が減るのは嫌
• 自分の財産を他人に任せるのは怖い
• 監督人まで付くのは大げさ
つまり、 費用と心理的抵抗が大きい。
③「自分はまだ大丈夫」という強い思い込み
おひとり様高齢者は、 自分の生活を自分で守ってきたため、 自己効力感が強い。
• 自分はしっかりしている
• 認知症にならない
• 他人に迷惑をかけない
• 自分のことは自分でできる
つまり、 任意後見契約は“自分の敗北宣言”に感じられる。
④「死後事務委任」の方が受け入れやすい
おひとり様高齢者は、 死後事務委任の方が受け入れやすい。
理由は、
• 自分の死後のことは現実的
• 認知症より抵抗が少ない
• 費用が明確
• 他人に迷惑をかけない
つまり、 任意後見より死後事務委任の方が心理的ハードルが低い。
では高齢者はどうすればいいのか?
ここが最重要です。
①「任意後見のデメリット」を話しても動かない
高齢者も家族も、 デメリットを聞いても行動しません。
理由は、 人は“損失回避”より“現状維持”を選ぶから。
②行動を起こすには「具体的な未来の映像」が必要
人は、 未来の映像が具体的になったときに行動します。
例:
• 認知症で通帳が使えない
• ATMで暗証番号を忘れる
• 病院で支払いができない
• 施設入所の契約ができない
• 不動産売却ができない
こうした“具体的な映像”が必要。
③家族には「相続の混乱」を具体的に示す
家族は次のような映像で動きます。
• 親の不動産が売れない
• 施設費の支払いが滞る
• 兄弟間で揉める
• 認知症で銀行が凍結
• 成年後見で専門職が選ばれる
つまり、 家族には“相続の混乱”を具体的に示すことが効果的。
④高齢者には「自分の尊厳が守られる未来」を示す
高齢者は次のような映像で動きます。
• 自分の意思が尊重される
• 財産が安全に管理される
• 施設入所がスムーズ
• 生活費が確実に支払われる
• 迷惑をかけない
つまり、 高齢者には“尊厳の維持”を示すことが効果的。
まとめ
●なぜ同時に成立しないのか
• 高齢者と家族の不安の種類が違う
• 高齢者は任意後見を避ける
• 家族は任意後見の必要性を感じない
• 高齢者は「自分の弱り」を認めたくない
• 家族は「責任の重さ」を嫌う
• おひとり様は後見人候補がいない
• 制度が複雑で行動が止まる
• 行動のタイミングが一致しない
つまり、 心理構造が一致しないため、 遺言と任意後見は同時に成立しない。
実務的アクション
• 高齢者には「尊厳の維持」を強調
• 家族には「相続の混乱」を具体化
• おひとり様には「死後事務委任→任意後見」の順番
• セミナーでは「遺言→任意後見」の順番
• アンケートで「セット相談」を明記
• 相談誘導は“控えめ”に、しかし“確実に”
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