相続相談福岡センター:〒818-0056 福岡県筑紫野市二日市北2-3-3-205
相続手続きは家族でする
相続手続きは、まず「遺言書の有無の確認」と「相続人の特定(戸籍収集)」から始めます。
身内が亡くなるとすぐに財産の分け方や名義変更に目がいきがちですが、前提となるルール(遺言)と参加者(相続人)が確定していないと、その後の手続きがすべて無効になるリスクがあるためです。
自分たちだけで手続き(セルフ相続)を進めようとする人が陥りやすい代表的な5つの勘違いを解説します。
1. 「家族のことは全員わかっているから、戸籍集めは不要」という勘違い
• 現実:
銀行や法務局の手続きでは、「家族の自己申告」は一切通用しません。
故人の「出生から死亡までの連続したすべての戸籍謄本(除籍・原戸籍など)」を提出し、隠し子や前妻との間の子がいないかを公的に証明する必要があります。
• ここが大変:
故人が本籍地を何度も変えている場合、全国の役所から郵送などで何通も取り寄せる必要があり、一般の人が最も挫折しやすいポイントです。
2. 「手書きの遺言書を見つけたから、すぐに開封して読もう」という勘違い
• 現実:
自宅で見つかった手書きの遺言書は勝手に開封してはいけません。
家庭裁判所で「検認」という偽造防止の手続きを受ける必要があります。
• リスク:
知らずに開けてしまうと、5万円以下の過料(ペナルティ)が科される可能性があるほか、他の相続人から改ざんを疑われるトラブルに発展します。
※法務局に預けられていた遺言書や、公正証書遺言であれば開封しても問題ありません。
3. 「遺産は預貯金・不動産だけ調べればいい」という勘違い
• 現実:
相続財産には、借金、住宅ローン、未払いの税金・医療費などの「マイナスの財産」も含まれます。
• リスク:
マイナスの財産が多い場合、引き継がないために「相続放棄」を選択できますが、その期限は「亡くなったことを知ってから3カ月以内」です。
のんびりプラスの財産だけを調べて3カ月を過ぎると、後から多額の借金が見つかってもすべて背負わなければならなくなります。
4. 「話し合いには、連絡が取れるメンバーだけ集まればいい」という勘違い
• 現実:
遺産の分け方を決める「遺産分割協議」は、法律上の相続人「全員」が合意しなければ法律上無効になります。
• 現実の壁:
「何年も音信不通の兄弟がいる」「認知症で判断能力がない親族がいる」「海外に住んでいる人がいる」といった場合でも、その人を無視して進めることはできません。
専門家に依頼して、後見人を立てたり行方不明者の調査をしたりする必要があります。
5. 「うちは財産が少ないから、申告も関係ないし期限もない」という勘違い
• 現実:
「相続税」には基礎控除(3,000万円+600万円×法定相続人の数)があるため、これを超えなければ申告は不要です。
しかし、一見地味な土地でも路線価で計算すると意外と高額になり、気づかずに基礎控除を超えているケースがあります。
• リスク:
相続税の申告と納税の期限は「10カ月以内」です。
期限を過ぎると、本来なら使えた税金の優遇特例(小規模宅地の特例など)が使えなくなり、延滞税などのペナルティが加算されて大損することがあります。また、2024年4月からは不動産の名義変更(相続登記)も3年以内に義務化されています。
自分でやるか、専門家に頼むかの判断基準
• 自分たちでできるケース:
財産が少額の預貯金のみで、相続人が配偶者と子供だけで揉める要素がなく、平日に役所や銀行へ行く時間がたっぷりある場合。
• 専門家などに頼むべきケース:
不動産がある、相続税がかかりそう、戸籍集めが複雑、相続人同士があまり仲良くない(または疎遠)という場合。
相続人の中に「連絡が取りづらい人(音信不通など)」や「認知症の人」がいる場合、そのままでは遺産分割の話し合い(遺産分割協議)を進めることができません。
無視して進めると手続き全体が無効になってしまいます。
それぞれのケースに応じた具体的な対処方法は以下の通りです。
1. 相続人の中に「連絡が取りづらい人」がいる場合
「連絡先がわからない」「連絡しても無視される」という場合でも、法的な手順を踏んで進める必要があります。
• 住所を特定して手紙を送る(戸籍・住民票の調査)
o 相続人であれば、他の相続人の「戸籍謄本」や「住民票の除票」などを辿って、現在の法律上の住所(住民票の場所)を調べることができます。
o 住所が判明したら、丁寧な内容の手紙(財産目録や今後の進め方の提案)を郵送します。
• どうしても連絡がつかない・行方不明の場合
o 不在者財産管理人の選任: 家庭裁判所に申し立てて、行方不明の人の代わりに財産を管理する人(弁護士など)を選んでもらい、その管理人が遺産分割の話し合いに加わります。
o 失踪宣告(しっそうせんこく):7年以上音信不通(または生死不明)などの場合、法律上死亡したものとみなす手続きを家庭裁判所に行います。
2. 相続人の中に「認知症の人」がいる場合
「物事の損得や契約の内容を正しく理解できない状態(意思能力がない状態)」である場合、その人が行った遺産分割の同意は無効になります。
• 成年後見人(せいねんこうけんにん)の選任
o 家庭裁判所に申し立てをして、認知症の相続人の代わりに財産の管理や契約を行う「成年後見人」を立ててもらいます。
o 選ばれた成年後見人が、その認知症の人に代わって遺産分割の話し合いに参加します。
• 注意点:後見人は「本人の利益」を最優先する
o 成年後見人(弁護士や司法書士などが選ばれることが多い)は、認知症の人の財産を守る義務があります。
そのため、「認知症の親には財産を渡さず、すべて子どもがもらう」といった、本人に不利な(法定相続分を下回るような)分け方には原則として同意してくれません。
o また、後見人を一度立てると、相続手続きが終わった後も(本人が亡くなるまで)原則として解任できず、毎月の報酬(数万円程度)が発生し続ける点にも注意が必要です。
事前の回避策は遺言書です
もし、亡くなった方(被相続人)がまだご健在で、これから準備ができる段階であれば、「遺言書」を書いてもらうことが最強の解決策になります。
• なぜ遺言書があると助かるのか?
o 遺言書に「誰に、どの財産を相続させるか」が明確に書かれていれば、残された相続人全員で話し合う(遺産分割協議をする)必要がなくなります。
o つまり、連絡がつかない人や、認知症の人がいても、その人を巻き込まずにスムーズに名義変更などの手続きが進められます。
財産の総額を調べるには、「プラスの財産(預貯金・不動産など)」と「マイナスの財産(借金・未払い金など)」の両方を漏れなく洗い出す必要があります。
自分たちで調査する場合の具体的な手順と方法
1. 預貯金の調査方法
故人がどこの銀行や信用金庫に口座を持っていたかを突き止めます。
• 手がかりを探す
o 自宅にある通帳、キャッシュカード、銀行からの郵便物、ポケット帳(メモ)を探します。
o スマホやパソコンのアプリ、メール(ネット銀行の場合)も確認します。
• 銀行への問い合わせ(残高証明書の発行依頼)
o 口座がありそうな銀行の窓口へ行き、「死亡日時点の残高証明書」と「取引明細書(過去数年分)」を請求します。
o 必要な書類: 故人の死亡がわかる戸籍、手続きする人の戸籍、実印・印鑑証明書など(銀行によって多少異なります)。
ポイント: 取引明細を見ることで、他の口座への送金履歴や、保険料・ローン・光熱費の引き落とし履歴が見つかり、別の財産や債務を発見する手がかりになります。
2. 不動産(土地・建物)の調査方法
不動産は自己申告の住所ではなく、法律上の「地番(ちばん)」や「家屋番号」で把握する必要があります。
• 名寄帳(なよせちょう)の取得
o 故人が所有していた不動産があると思われる市区町村の役所で、「名寄帳(課税台帳)」を請求します。
o 名寄帳には、その市区町村内で故人が所有していたすべての不動産(非課税の私道なども含む)が一覧で掲載されているため、漏れを防げます。
• 固定資産税の納税通知書を確認
o 毎年4月〜5月頃に役所から届く通知書に、所有している不動産の一覧と評価額が記載されています。
• 登記簿謄本(登記事項証明書)の取得
o 法務局で不動産の「登記簿謄本」を取り、現在の名義人や、借金の担保(抵当権)が入っていないかを確認します。
3. 有価証券(株式・投資信託)の調査方法
• 証券会社からの郵便物・電子交付書の確認
o 取引報告書や、配当金の通知書がないか探します。
• ほふり(証券保管振替機構)への開示請求
o どこの証券会社に口座があるか全くわからない場合、「証券保管振替機構(通称:ほふり)」に調査を依頼(登録済加入者情報の開示請求)すると、故人が口座を持っていた証券会社名が判明します。
4. マイナスの財産(借金・ローン)の調査方法
借金を隠したまま亡くなるケースもあるため、慎重な調査が必要です。
• 信用情報機関への開示請求
o 個人の借入情報が登録されている以下の3つの機関に、郵送などで開示請求を行います。これで消費者金融、カード会社、銀行からの借入(ローン)の有無がほぼ網羅できます。
1. JICC(日本信用情報機構):主に消費者金融
2. CIC:主にクレジットカード会社・割賦販売
3. 全国銀行個人信用情報センター(KSC):主に銀行・信用金庫
• その他の確認
o 自宅に届く督促状や、通帳からの不審な引き落とし(「DF」「JCB」などの名目で定額が引かれているなど)がないか確認します。
調査のコツと注意点
• まずは「財産目録を作る
o 見つかった財産は、エクセルやノートに「金融機関名・支店名・口座番号・金額」などを書き出し、一覧表(財産目録)にまとめておくと、その後の遺産分割協議や相続税の計算がスムーズになります。
• 3カ月の期限に注意
o 前述の通り、マイナスの財産が多くて「相続放棄」を検討する場合は、「亡くなったことを知ってから3カ月以内」にすべての調査を終えて判断する必要があります。
以上ですが、分からないことがあれば、相続財産福岡相談センターにお気軽にお問い合わせください。
以下のフォームに必要事項をご記入の上、「送信する」ボタンをクリックしてください。